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「なぁダルイ」
「あ?」
「オレと組むのやめないか?」
「はぁ?」



こいつはいきなりを何を言い出すんだ。

ついダルイは声をかけられても止めることのなかった手を止めてシーの方に顔を向けた。


至って真面目な顔をしている。
冗談で言っているわけではないということか。

とにかくダルイは理由を聞こうとシーに訪ねた。
なんてことはない、単純なことだった。



「オレは弱い。感知だけは里の中ではトップレベルだが戦闘になるとお前や雷影様のようには動けない」
「で?」
「だから、雷影様の側近は…」
「やめるってか?」
「そうだ」



またくだらないことで悩んでいるものだ。
ダルイは止めていた手を再び動かし始めた。

シーがこんなにも弱気になっているのは五影会談の時にうちはサスケの幻術にかかってからだ。

あの時気絶してしまったのを悔いているようだった。



「まぁ、同じことをボスにも言ってきたらどうだ?」
「…そうだな、言ってくる」



そんで殴られて来い。


ダルイはシーの言っていることを了承するつもりはなかった。
自分の相方はシーだけだと思っているし、雷影もシーのあんな弱気な姿を見て黙ってはいないだろう。怒鳴られて殴られて、それでやっと自分がどんだけバカなことを言っているかわかるはずだ。


そりゃあシーは確かに戦闘の技術に関してはそこまで秀でていない。
だが感知になると別だ。
誰のチャクラかも感知できて、居場所もかなり狭い範囲で特定できる。
冷静に分析して戦えるかどうか。
好戦的な雷影を諌める役も担っている。


自分だけ弱いだなどと思ってはいけない。
あいつが弱いなら里の大半の忍が弱いということになってしまう。

自分を過小評価するということはそれより下にいる者を侮辱するに等しいことだ。


だから自分も弱いとは思うが、それを口に出したことは一度もない。


そこら辺がわかっていないところがシーらしいとも思うが、今回はさすがに凹み過ぎだ。



「さーて、ボスが目を覚まさしてくれるかな」


言った直後に、雷影の「馬鹿なことを言うな!」の声とともに鈍い音が響いた。


かなり本気の拳骨でも喰らわしたんだろう。
シーは声もあげられないのか何も言っていないようだった。



ダルイの部屋の壁は先日ビーがふざけて壊したばかりなので、板を張り付けただけの音がまる聞こえの部屋になってしまっていた。

それがこんな時に役に立つとは。

ダルイは笑いながら書類にサインをしていく。
ようやく最後の一枚という時に、また雷影の声が響いた。



「ダルイに聞いてこい!!」



何をだ、と心の中で反射的に返したのは仕方ないだろう。

つい手に力を入れて折れてしまった鉛筆の芯が書類を僅かに汚す。
それを手で払おうと思った瞬間、なぜかドアからではなく板を打ち付けていた壁からシーが部屋へと侵入してきた。

どいつもこいつもオレの部屋を何だと思ってるんだ。



「ダルイ!」
「お前後でそこ直せよ」
「わかった!ダルイ!」
「何だよ」
「オレは必要か!?」
「いらないって言ったらどうすんだ」
「傷つく!」
「だろうな」


こちらとしては不親切な意味のわからない質問に冗談で返してやっているんだが、シーは本気で訊いているらしい。

ボスの言っていたのはこのことかと思うと、何でこんなことをとも思った。


答えはわかりきっているのに。



「お前はオレの相棒だろ」
「あぁ」
「必要なかったら何年も一緒にいねえよ。それと、お前は弱くなんかない。感知は戦闘では重要だ。オレには感知ができないからお前がいる。お前が戦闘があんまり得意じゃないからオレがいる。それだけだろ」



何も悪いことなんかない。


そう言うと、シーはどれだけ溜めこんでいたんだかわからないが、震える声で「そうだな」と言った。

弱い声だった。


こいつは何もかもを深刻にとらえ過ぎる。
失敗も弱さも全部。

深く入り込んでいつの間にかそこに立ち尽くしたまま動けなくなっている。


その背中を押してやるのがオレの役目だ。


「お前は必要な人間だシー」
「だけどまた失敗をするかもしれない…っ」
「オレがカバーしてやるって。その代わりお前はお前のできることをしろよ。オレをサポートしてくれ」
「…わかっ、…た」
「泣いてんじゃねえよ…」
「うるさい、嬉しい、っだけだ」
「…そうかよ」



こいつは脆い。
里を思うあまり、自分にとんでもなく大きいプレッシャーをかける。

『自分にはできるはずだ』

それは失敗した時、体にも心にも傷を残してしまう。


こいつの性格の駄目なところだ。



「シー」
「なん、だ」
「やっぱ、あそこの壁、一緒に直そうぜ」
「わか…った…っ」



一人より二人の方が早く作業は進む。
一人より二人の方が楽しいだろう。


オレだけより、お前がいた方が強いだろう。



それをわかれよ、馬鹿シー。





 
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