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「モトイーっ!!」
「うおっ!ビー!?」
休日の昼下がり。
モトイはまったりと自宅で寛いでいた。
そこに突然訪れた来客によるドンッという振動でコップの中に入れられた牛乳は物があまり置かれていない床へと流れ落ちた。
それを視界の端で捉えながら、モトイは出入り口ではない窓から侵入してきたビーを見て驚いていた。
「どうした!?」
「…はぁ、げほっ…!…れてんだ」
「は?」
「追われてんだ!少しでいいからかくまってくれ!」
「は?わ、かった」
いまいち状況がよくわからないモトイはとりあえずこぼれた牛乳を拭きとってからビーにぶどうジュースを出した。
ストローを使ってボコボコとジュースを泡立たせるビーを注意し、入れ直した牛乳を口に入れながらモトイはビーに訊いた。
「何に追われてるんだ?」
「…………」
「言えよビー」
「…嫌だ」
「俺を巻き込んでおいてそれか」
「絶対怒る」
「わかんないだろ」
「わかる。絶対怒る」
「……」
こういう時のビーは何を訊いても答えない。
モトイはすぐに諦めて、まぁ少ししたら出て行くだろうとテーブルの上に置いていたクナイを手入れし始めた。
「……」
「……」
沈黙。
いつもは構え、遊べとうるさいビーが珍しいとモトイはビーの方をちらりと見ると、そこにはテーブルに腕を組んで、その上に頭を乗せて寝ているビーがいた。
何かに追われているんじゃなかったのかとつっこみたい衝動に駆られたが、起こして騒がしくなるのもそれはそれで、とモトイは呑気に寝ているビーを起こさずに再度クナイを磨き始めた。
しばらくそれに没頭していると、爆睡していたビーがバッと顔を上げて辺りを見回した。
完全に寝ぼけている。
「ビー?」
「……モトイか。…眠い」
「…」
もう一度ビーが眠りにつこうとした瞬間、それは訪れた。
荒々しいノック。
ドアがぶち破れるのではないかと思ってしまうほどだ。
その音が聴こえるなり眠いと言っていた男は飛びあがって部屋の隅へと移動する。
ビーの怯えようといい、荒々しいノックといい。
一体何なんだ。
モトイはドアを開いてからビーがなぜ何も言わなかったのか一瞬で理解した。