dream

□他の誰かと笑わないで
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いきなり屯所に来た女の子、雪村千鶴ちゃん。大広間で会った瞬間に分かった。総司が好きなタイプの子だ。

案の定、総司は千鶴ちゃんと一緒にいるようになった。勿論、私も一緒にいたいけど、女中の仕事は忙しくて抜け出せない。縁側で二人で談笑している姿を遠目で見ることしか出来ない。私の幸せな時間にもあと少しで終わリが来るんだと思った。そんなこと考えていたら、目頭が熱くなってきた。まだ決まったわけじゃないのに。今付きあってて恋人なのは、わたし。大丈夫、まだ、一緒に居られる。

「どうした、手が止まってるぞ。」
気づけば土方さんが私を覗き込んでいた。そういえば土方さんの書類整理の手伝いをしていたんだった。
「あっ!ごめんなさい…」
「…総司か。」
思わず苦笑しか出なかった。視線の先でばれたのかな。こんなことなら障子ちゃんと閉めとけばよかった。土方さんは目を細め微笑みながら
「なんかあったら言えよ。」
と、くしゃっと頭を撫でてくれるからまた目頭が熱くなってきた。この人は、鬼なんて言われてるけど優しいんだ、優しすぎる。
「大丈夫ですよ、ありがとうございます。さ、仕事続けましょうか。」
土方さんは納得いかないような顔をしながらも、笑ってくれた。

「あ゛〜っ!肩痛いいいい。」
「うるせえっ!」
書類整理をすべて終わらせ肩を鳴らしながら唸ると怒られてしまった。土方さんも一段落ついたみたいで茶を啜っていた。
「いいですね〜茶。私も飲みたいです。」
「てめぇで煎れてこい。俺に頼るな。」
「…チッ覚えとけ」
小声で言ったのに聞こえたらしくて怒りに震えてたので急遽おいとました。復讐の手立てを考えていると思わずニヤついてしまった。
あ、私笑えてる。…さすがだな土方さんは。

夕食の時間になったので皆が大広間に集まる。今日は集まるのが早くて御膳が用意できていないので焦って準備していた。ご飯のとき、毎回座るのは私、総司、千鶴ちゃんという順番。何気にきついんだよね。私には話しかけて来ないで千鶴ちゃんをからかってばかりで、話しかけても雑に扱われる、寧ろ背を向けられてる。…今回は私は裏で食べようかな。そしたら総司何か言ってくれるかな。

土方さんが席に着いた。よし、特別製を持っててやろう。てか私何時の間にこんなに土方さんと打ち解けたんだろう。土方さんのご飯には地味〜な復讐として味噌汁を具無しにしてやった。
「「いただきます!」」
その声がかかったら女中は廊下に出る。総司、気づいてくえるかな。
「あれ、出てっちゃうの?」
声を掛けてくれたのは平助君。
「忙しくて、ご飯持って来れなかったから、さ。」
「そっかしゃあねえな!今度は食おうな!」
平助君も優しい。でもその問いに肯定も否定も出来ないから笑っておく。ふらっと横目で総司を見ると此方を見てもいなかった。千鶴ちゃんと二人で笑い合っていて、私なんか視界にも入ってないと知った。




他の誰かと笑わないで


そう言えたらよかったのに




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0805.私

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