dream

□少女漫画なんか
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ありきたりなドラマみたいに幼なじみなんて滅多に居ない。仮に居たとしても、付き合いなんて段々と減っていく。ましてや一途にずっと片想いなんてするわけがない。

ありきたりな少女漫画みたいに学校のアイドルと凡人が付き合えるなんてありえない。美男には美女が必ず付くものであり、仮に付き合えたとしても凡人は即終了だ。

おかげでドラマや少女漫画を随分と冷めた目で見ていた。あんな華やかな恋なんてしないだろう、と思い込んでいた。
しかし、人生とは分からないものだ。こんな私が少女漫画のように、周りに花が咲くような美男に恋をした。

私は先日、四天宝寺に転校してきたばかりだ。無駄に広い学校で軽く迷子になってしまったが、クールで通しているため安易に人に尋ねられない。どうしたものか、と考えていると「あれ?転校生さんやん。何しとんの?」と声をかけられた。そちらを見ると白石蔵ノ介。「あ、し白石くん?」「そやで。」にこっと効果音がつくような胡散臭い笑顔を顔面全体に貼り付けて笑いかけてきた。

「あー、職員室てどこだっけ?」一応困っていたので問うと「こっちやで。」とわざわざ付き添ってくれるらしい。軽く迷惑だが笑っておく。そこから話しても彼はずっと作り笑顔のままだった。

「ねえ、気分悪くさせたら悪いんだけど、」「なん?」胡散臭い笑顔のまま不思議そうに、こちらを見る。「何でいっつも胡散臭い笑顔してるの?」うわ、ちょっと口調きつめだったな、今の。印象悪くさせたな。「……」軽く目を見開き、すぐ戻したら無言で見てくる。「あー、ごめんね。気にしないで。私には胡散臭く見えちゃって。」頭を掻きながら言う。「いや、別に」下を向きながら言われた。こりゃ怒ってんな。アイドル怒らせたら学校中から嫌われるな。嫌だわ。「ちょっと、嬉しくて。」はい?え?「貶されたい、の?」苦笑しながら言うと焦ったように「ちゃうわ!気付いてくれる人もおるんや、と思って。」「みんな気付いてるでしょ。あんな笑顔…。」「ははっ結構言うねんな。」「、だって…」思わず口ごもってしまった。

「ほんま、ありがとう。」頭を軽く撫でられ、去り行き様に一瞬見せた笑顔が本物の笑顔と信じたい。私は火照る頬を隠し、彼に即座に恋に落ちた。


少女漫画なんか嘘ばっか

だけどそんな恋を信じてみたい


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0521.私

初甘だが続編有り



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