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□蛍 side:I
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※「蛍 side:S」の臨也視点バージョン


※「side:S」の雰囲気を大切にしたい方は絶対に読まない方が良いと思います、今回は正反対の雰囲気です


※打って変わってめっちゃ暗いです、切ないです、ってか軽くホラー


※「side:S」単品としても読めるように今回分けましたので、この話を読んでから苦情は一切受け付けません




















では、大丈夫な方はどうぞ。





































真っ暗な夜の闇の中、俺はさくさくと、川への道を踏みしめていた。


こげ茶色の、浴衣を纏って。


どうしてかって?


簡単さ、蛍を見に行くんだよ。


浴衣はその雰囲気出し。


だって夏と言えば…、


まあでもこれは俺の意見じゃない。


“夏と言えば蛍”


そう言ったのは俺の恋人のシズちゃんだ。


とは言っても、蛍が出てくるのは初夏なんだけどね。


まあそんな細かいことを気にしないのが俺の恋人の良いところ、っていうかなんていうか…。


俺は持っていた小型の懐中電灯を頼りに、ただひたすら道を進む。


周りには誰もいない。


それもそうだ、だってここは…


っと、シズちゃんだ。


河川敷の大きめの岩に、こちらに背を向けて座っている。


足元には、俺のキャンドルランタン。


彼が着ている抹茶色の浴衣は、俺が選んであげたものだ。


口じゃ「そもそも俺浴衣なんて着ねぇよ」なんて文句ばっかり言ってたくせに…本当、素直じゃないんだから。


俺は懐中電灯を消して、そろりそろりと彼の背後から近付く。


「…だーれだっ!」


そっと目を覆い隠して、わざとはつらつとそう言ってみる。


「…何やってんだ、臨也。」


「あったり。さすがシズちゃん!」


早々に当ててくれたシズちゃん。


俺は嬉しくてたまらなかった。


ちゃっかり彼の隣に座ってみる。


「遅ぇよ馬鹿。」


だけど彼から返ってくるのは、そんな素っ気ない返事。


それでも俺は嬉しかった。


「ケチだなぁ、良いじゃないちょっとくらい。」


俺はそんな言葉ではぐらかした。


「誰がケチだ。」


ぽつり、とそうシズちゃんが言ったのが聞こえたが、怒る素振りは一切見せない。


お互い慣れたもんだよねぇ…。


「っていうかシズちゃん、本当にここ気に入ってくれたんだね。苦労して探した甲斐があったってもんだよ。」


「夏と言ったら蛍だろ、やっぱ。」


「まったく…そういうとこは名前通りなんだから。まあそんなところが好きなんだけどね。」


「…馬鹿野郎。」


分かっている、シズちゃんがそんなことを言うときはただの照れ隠しだってこと。


俺はシズちゃんがそっぽを向いた隙をついて、そっと、盗み見るようにして改めて彼をよく見てみる。


あぁ…。


俺は内心で、そんな悲嘆の声を上げる。


俺の目に映ったシズちゃんの体は“透けていた”。


「(…シズちゃん。)」


俺はばれないように、顔をちょっと伏せる。


たぶん、シズちゃん本人は気付いていないんだろう。


自分の体が透けていることに。


しかし俺は、そんな悲嘆にくれる俺の様子を気取られぬよう、川を眺めた。


そういうとこばっかりは鼻が利く化け物…いや、“幽霊”だからね。


すると、俺の視界にほのかな光が映った。


「…あっ。」


思わず声が漏れる。


「ん?」


そう答えたシズちゃんに我に返った俺は、慌てて顔を取り繕う。


いつも通りを装わなければ。


「今、蛍見えたよ。」


「本当か!?」


「シズちゃん、声立てちゃ蛍逃げるよ。」


「…っと、悪ぃ。」


「ほら、あそこ。」


「…お。」


蛍を見つけたシズちゃんが、まるで子供みたいに楽しそうに顔を緩ませる。


ははっ…かわいいなぁ。


ぼんやりとしか見えないのが残念だよ…。


「良かった、今年もちゃんと見れそうだね。」


そんな本心は隠して、俺は言葉を続ける。


「おう。」


笑顔で、そう答えるシズちゃん。


もう一度蛍に見入って、感嘆に呟いた。


「綺麗だ…。」


俺はそっと目を伏せて、


「そうだね。」


と答えたのだった。
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