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□甘いもの
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※GREEの某創作系コミュニティ様へ投稿したもの





「あははっ!さっすがシズちゃんだね。生クリーム、あっという間に出来ちゃったよ!」
「…。」
 かん、かん、かん…。
ジーンズ地のエプロンと三角巾を付け、静雄はなおも無表情で、泡立て器を使いボウルの中身(スポンジの生地)をかき混ぜていた。しかしふと手を止め、楽しそうに生クリームをつまみ食いする臨也を睨み付ける。
「…てめぇ、もしかしてこの為に俺呼んだんじゃねぇだろうな…?」
「やだなぁ、俺とケーキ作るの、そんなに嫌?」
「……ぃ…嫌とは…言ってねぇだろ…!」
すると静雄は顔をうつむけ、泡立て器のスピードを早める。
「わぁ、シズちゃんがデレたwwかわいいなぁ、もう!…ってちょっと、それ以上スピード上げると中身全部飛んでっちゃうよ?」
臨也の自宅のキッチンでそんな光景が繰り広げられることになったのは、今から遡ること約1時間―。

1時間前・池袋。
臨也は突然、静雄の前に現れた。
『やぁ、シズちゃん。偶然だねぇ…っていうより探してたんだけど。君、今日オフだよね?』
仕事も休みで、特にすることもなかったために地元の公園で日向ぼっこをしていた静雄。本当は臨也を呼んで久々にデートでもしようか、と頭に掠めたのだがあいにくの平日。仕事の邪魔はしたくなかったので、こうして1人でのんびりしていたのだが…そんな中、件の臨也は現れた。
『あぁ…そうだけど…。』
『もう、連絡のひとつくらいくれてもいいじゃない?』
『いや…今日平日だったから。』
『残念だけど、良い意味でも悪い意味でも、情報屋に平日休日祝日は関係ないよ。』
『…てめぇもオフなのか?』
『そ。そこでなんだけどさぁ、シズちゃん。』
すると臨也はベンチに座る静雄に対して腰を屈め、ぐい、と彼の顔の目の前に自分の顔を突き出す。突如縮まった距離にびくりとする静雄。
『これからお菓子作ろうかと思うんだけど…ちょっと付き合ってくれない?』
『…お菓子?』
『そ。じゃあ待ってるから、早く俺ん家来てね。』
『え、は?』
『そんじゃ、よろしく♪』
そんなわけで臨也は足早に去っていった。
『…。』
半ば強引に約束を取り付けられた静雄は、しばらく呆然としていたものの、やがて立ち上がる。
『…仕方無ぇな。』
たまにはそんな女々しいことも悪くないかもしれない。そう、あいつとなら―。
『(…ちっ、重症だな俺も。)』

そんなわけで、特に深く考えもせず臨也の家に来たのはいい。しかし、そのお菓子というのがケーキだったのは驚いた。本格的すぎる。更にはどこぞの「何分クッキング」のように材料を全て測り終えて小皿に移し、エプロンと三角巾姿でスタンバイしていたのだから、一体臨也に何があったのか疑った。
「…おい、何でいきなりケーキなんだ?」
泡立て器をなおも上下運動させながら、静雄はオーブンを眺めだした臨也に声をかける。料理本を見ながらの作業だったのでタイミングがずっとつかめなかったのだ。
「ん?あぁ……それはまあ出来上がってからのお楽しみ♪」
「はぁ?」
そう聞き返しても、臨也は微笑むだけだった。

「うん、ばっちりだね。シズちゃんにしては上出来な生地なんじゃない?」
オーブンの余熱の確認を終えた臨也が、静雄の真横に来て生地の具合を確かめる。
「…一言多いんだよ、てめぇ…生地ぶっかけんぞ。」
「そういう割には嬉しそうな顔してるね?そんなに俺に褒められたの嬉しかったんだ?」
「な…っ//」
「シズちゃん、顔赤いよ。もう、ウブなんだからさ♪」
ふと、臨也が口角を上げたことに、照れていた静雄は気付かなかった。
「あ、でもシズちゃん。ここ、ダマになってる。」
すると臨也は、まだ泡立て器を握ったままだった静雄の手を包み込むようにつかむと、生地の、ある一点を集中的に混ぜる。
「…!!///い…臨也…!」
臨也の予想通り、静雄はあたふたした声を上げるもやはり臨也にされるがまま。
「(1日でこんなにシズちゃんがデレるなんて、ついてるなぁ!…よし、もうちょっとやってやろう。)ちょっと、シズちゃん。腕に力入りすぎ。仕上げなんだから丁寧にやらないと台無しになるよ?」
そして臨也は空いていた左手で、静雄の背中を下から撫で上げ、肩まで到達すると、ゆっくりした動作で静雄の肩をほぐしてやる。
「…っ!!///」
「ほら、リラックスして…さ?」
「い…ざや…!!て、め…っ。」
「おっと!」
するとその時、ボウルが静雄の手を滑り落ちる。慌てて両手でそれをキャッチする臨也。
「もうシズちゃんったら、リラックスしすぎ♪」
一方、にやっ、と笑いかけられた静雄はと言えば、すっかり顔を紅潮させ、膝に両手を置いて臨也を睨み付けた。
「…確信犯かよてめぇ…ダマなんて本当にあったのか、コラぁ!!」
「あははっ!!ごめんごめん、シズちゃんが俺のために一生懸命混ぜてくれた生地にダマなんてあるわけなかったか♪」
「…〜〜っ!!!////」
「うわ、シズちゃんかわいい!」
「るせぇっ!!!さっさと焼くぞ、オラァ!!!!」
「はいはい。(どうしよう、思ったより楽しくなってきちゃったなぁww)」

「よしっと…少し休憩したら、デコレーションでも考えようか?」
「あぁ…。」
生地を型に流し、オーブンに入れた2人はちょっとしたブレイクタイムに入っていた。広々としたソファに、静雄はどっかり座るとその長い足を組む。三角巾を取り、背もたれに両手を広げ天井を仰いだ。やがて、オーブンの中身を観察していた臨也も立ち上がり、ソファの方に視線を向けた。
「…シズちゃん、紅茶でも飲む?」
「コーヒー…。」
静雄は若干疲れた声で、そう一言返す。またしても臨也がにやり、と口角を上げたことも知らずに―。
やがて、臨也がカップを手にソファに歩み寄ってきた。静雄は触られたり照れたりと、相当疲れたようで同じ体勢のままだ。
「…臨也、何してやがる。」
「え、何って?」
「さも当たり前のように言うんじゃねぇ!何でコーヒー片手に俺の上に乗ってんだ!?」
何をする気か、臨也は静雄が組んでいた足の腿の辺りに座り込み、左手で静雄の肩を押さえつけ、右手には湯気の立つカップを持っている。
「あはは、まぁまぁ!細かいことは気にしない♪」
「細かくねぇ!」
「そう言いつつ、抵抗しないシズちゃんもシズちゃんだよね。誘ってるの?」
至近距離で、また臨也が口角を吊り上げた。すると静雄は、ふいっと視線を反らしてぼそり、と呟いた。
「…んなことしたら臨也がコーヒー被って火傷するかもしんねぇだろ…。」
その言葉に、臨也は一瞬目を丸くするも、すぐに満足そうに微笑んだ。
「優しいね、シズちゃん…そんなシズちゃんの優しさに、お返しあげるよ。」
「…あ?」
すると臨也はぐいっ、とコーヒーを口に含む。その臨也の姿に、静雄がまさか、と思ったときにはもう遅かった。
「…ッ!!!」
静雄の喉を熱いコーヒーが走っていく。臨也に口移しで飲まされたのだ。突然のキスによって火照った体の熱と、今しがた駆け抜けたコーヒーの熱に頭がくらくらする。一方の臨也は、静雄の肩を押さえつけていた左手を、今度は静雄の首に巻き付けホールドし、カップを持ったままの右手は、背もたれを唯一の支えにしてぶらんとなっている。
やがてコーヒーを完全に流し込むと、臨也は一瞬だけ唇を離した。
「ぃ、ざや!!//てめ…ぅ、ん!?」
そんな彼の言葉を遮り、臨也は静雄の唇を自分のそれで塞ぐ。
「(全く…デレっデレなシズちゃんがいけないんだからね…もうちょっと、付き合ってもらうよ。)」
角度を変え、何度も繰り返されるキス。初めは抵抗気味だった静雄も、次第にそのキスに呑まれていく。やがて静雄はそっと臨也の後頭部に手を持っていき、三角巾を取るとそのまま手を添え、肩にもう片方の手を回し―
 がちゃんっ
臨也の右手から滑り落ちたカップが、床で砕け散った―。

焼き上がりを告げるオーブンの電子音で、2人は我に帰る。確かに部屋には甘い香りが充満していた。そして臨也は唇を離し、
「そういえば、生地焼いてたんだね。」
と言って静雄から下りた。ぱたぱたとオーブンに駆け寄っていく彼を、静雄は呆然と視線で追う。やがて臨也がオーブンから鉄板ごと生地を取り出すと、静雄に手招きをしてこう言った。
「デコレーション、しよう?」


 【甘いもの】


(なぁ、なんでケーキなんだ?)
(…シズちゃん、まだ思い出せないの?)
(…?)
(はぁ…今日、俺たち付き合い初めて1ヶ月記念日。)
(…あ。)
(苺アターック!せいやっ!!)
(むぐっ…!)
(2ヶ月記念日忘れたら、今度はキスだけじゃ済まさないからね♪)
(…!?//)





end

腐女子友のリクエストで一番ウケが良かった奴(笑)ちなみに私が腐文を書くのは友のリクがほとんどです。

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