雨の波紋

□第2章 独り言
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ボールは吹雪から再開。

FWの吹雪からということもあってか、再開直後から互いにボールを奪い合う。

「さっきみたいに、フェイントじゃとらせないぜ!!」



ショルダーチャージで、炯は突き飛ばされ、少しむっとした。

「むー・・乱暴だなぁ」

立ち上がって、すぐに追いかける。


「『リプル・フィールド』」


地面が水面のようになって、炯の姿が見えなくなる。


一面に起こっていた波紋がぱっと消えて、炯は吹雪の前に現れた。

「!?」

「なんてDF能力だ!」


ボールをもって、ゴールへ走る。
吹雪も追い付いてきている。


「『クラウン・レイン』」


力を込めるというよりは、軽く受け流すようなシュート。

ゴール前に吹雪。
吹雪はいつの間にか元の吹雪になっているようだ。


受け止めようとした、その時、ボールがS字に曲がり、吹雪の後ろでゴールに入った。

「え…?」

「これで同点、だよねぇ?」


「なんだ!? 今の不規則な動き!」

「今のボール…凄げぇ回転してたような…」



そこで終了のホイッスルがなる。

「あららー 時間切…」

炯ははっとして目を見張る。

円堂達は気付かなかったようで、炯に駆け寄った。


「お前、凄いな!!フェイントなんて、いつ球を取ったかわかんなかった!」

「…あ…ありがとー」

「炯ちゃん…?」



「炯、サッカーやってたのか?

最初から見たかったのに。」


炯と瓜二つの少女が歩いてくる。


「お前、さっきの4階から降りてきた…!」

「おい、俺にはちゃんと神崎 明って名前があるんだけど」


「炯さんとそっくり…双子なの?」

「違ぇよ。
俺は1年、姉ちゃんが2年だ。」

サッカーボールを拾い上げ、おもむろにリフティングを始める。


「おお!お前、サッカーやんのか?」

「ああ、昔やってた。」


炯は少しの間俯いたままだったが、にこりと微笑む。

しかしそれは完全ではなくて、やや不自然な笑顔になった。


「…明、君ソフトボール部に戻りなよ。

試合近いのに、また抜けてきたんでしょー?」

「ああ、そうだった!じゃあな!」



炯はそれを目で見送って、視線をこちらに引き戻す。

「…じゃあ、私そろそろ帰るねー?


「え?ちょっと待っ…」


「待ちなさい。」

「…何ですかー?」


「あなた、稲妻キャラバンに参加する気はない?」


炯は振り返って、監督を見据える。



「ジュニアでの記録を見て来たなら、

その台詞、あの子に言うべきじゃないかな」









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