雨の波紋
□第8章 消失
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バタバタ走る音とざわめく声。
炯は腕で汗を拭う。
水浸しになったトレーニングルームの床をボールが弾んでいる。
「何かあったのかな…?」
第1話 焦燥
廊下を覗き込むと、奥の部屋に人が集まっているようだ。
「食らえデザーム!!」
吹雪が次々とマシンにシュートを打っていく。言動といい、あの目つきといい、これは…アツヤだ。
元々気性の荒い感じではあったけど…
なんだかいつにも増して気が立っているような…
「あ、炯先輩」
「…吹雪くん、どうかしたのー?」
「わからないの。みんなで練習してたらいきなりこうなって…」
「イプシロンのキーパーにエターナルブリザードを止められたのがよっほど悔しかったんですね」
「…。」
でも、あの時はあそこまでではなかったような気がする。
…もしかして、染岡くんがいなくなったから?
今、ストライカーが吹雪くんしかいない。
自分が入れなければ、という思いが過剰に強くなっているんだろうか。
「…今は吹雪の思うようにさせよう。あの意気込みが試合に良い方向に出るかもしれない」
みんなは複雑な表情のまま、鬼道の言葉に従うことにしたようだ。それぞれ練習に戻っていく。
吹雪はそれにも気付いていないようだった。
その瞳はただ必死に、ゴールだけを睨んでいる。
自信があって挑発的な彼がこんなにも切迫している…。
炯はしばらくその背中をじっと見つめていた。
*
『アツヤ、少し休憩しようよ』
忌々しそうな顔で、「うるせえ!」と言われた。
ほんの少し前まで僕が表に出ていたのに、今は内に追いやられてしまっている。
代わりにアツヤが一人、マシンに向かっていた。もうずっとこの調子で、シュートを打ち続けている。
最近のアツヤはやけに強制力があった。
以前は、ほぼ僕の意思で代わっていたのに、気付いたら交代させられている。
焦っているんだろうか。
エターナルブリザードを止められて、アツヤの「完璧」が揺らいだ。
シュートを打たなきゃ、
もっと強く、完璧に…
そんな気持ちが伝わってくる。
――――…いや、僕の気持ちかもしれない。
もっと強くなりたい。
僕がここに必要とされるために。
ここに在り続けるために。
強くなって、完璧になる。
そうしたら、炯ちゃんに伝えよう。
僕の気持ちを…
2011.1.28
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この章からページごと更新にします。
章丸々だと更新に時間がかかるので…。
…と言うわけで、便宜上、話数とタイトルを付けました。邪魔っぽい時は消すかもしれません。