雨の波紋

□第6章 欺瞞
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瞳子監督の笛で、さも今起きたかのように体を起こした。

眠気で瞼が閉じそう。

これが夜に来てくれるといいんだけど。

いつまでも瞼を擦っていたら、「相変わらず眠そうだね」と一之瀬に笑われた。




携帯が震えて携帯を開く。
明からだ。

いつもたいした内容じゃないんだよね…。


『炯、頭にたくさんツノ生やしてる奴がいたら吃驚するよな??

俺だけじゃないよな?』


…意味不明だ。

ツノって何? 季節外れの鬼のお面でも被ってるのか?


返信するのも面倒だ。
いいか…シカトで。

私はいつもあんまり返信しないから大丈夫だろう。

わからないけど、多分、頭にツノつけたビックリ人間?に共感してほしかっただけだと思う。



にしても、今は学校だよね?


…転校生かな?






窓際から染岡、吹雪と並ぶその隣。いつの間にか指定席になっていたそこに座る。

吹雪はいつもと変わらぬ様子で、染岡と話していた。



昨日、私は彼の悲惨な過去を聞いた。

あんな辛いことを、私に淡々と話してくれた。




思わず見つめていたらしく、吹雪がこちらを振り返る。

「何? どうしたの?」

「ううん、なんでもないー」


時々、何処か遠くを見ている気がするのは、家族との思い出を見ていたのかもしれない。


そんな吹雪くんが、たまに何処かへ行ってしまうような気がして、少し不安だった。




彼は私と似ている。

なんとなく吹雪くんの方もそう感じているようだ。


私もずっと一人だった。

だから、彼の辛さは少しわかる気がした。


彼の痛みも苦しみも、一緒に受け止めたい。



そう思った。








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