雨の波紋

□第3章 無重感
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京都へ向かうキャラバンは、心地よく揺れて、眠気を誘った。


まさか私を探して、山口までわざわざ来る人がいるなんて思いもよらなかった。



本当は、少し嬉しかった。




炯は思い返す。


「後悔なんてしないよ。」

吹雪が言った。


「僕は君と一緒に戦いたいって、思ってる」



吃驚した……


いや、違う。



何かが私の中で波紋となって、広がった。

私はそれを認めた。



……私にもこんな感情、あったんだ。



そんな気持ちが半分、

無意識だとしたらこれは相当の女誑しだなぁというのが半分…


思わず、本当に笑ってしまった。




隣に座る吹雪は、窓際の染岡と楽しそうに話している。



凸凹コンビだなぁと思っていたら、吹雪が振り向いた。


「炯ちゃん、眠いなら寝ててもいいよ?
まだ先みたいだし…」

「いや、大丈夫ー」


そういえば、試合した時、吹雪くんの口調が変わったけど今は普通だ。



でも……あれって…




「そういえば、明ちゃんに声かけてこなくて良かったの?」

「ん。いいよー
あの子はライバルだからー」

「え?」

首を傾げているが、説明する気はない。


「君達のおかげかな。

戦うチャンスを貰えたから。」

ごまかさず、目をつぶらないで…今度こそ、向き合うチャンスを。


「勝つって決めたんだ。

だからわざわざ宣戦布告なんてしてあげない」


絶対、私は私を認めさせる。




「…ちゃんと答える気ないでしょ」

「あれ、案外よくわかってるねっ?」

「雨宮中のやりとり見てれば、わかるよ。」


そんなわかりやすいのかな?私って…



…まあいいや。

気を取り直して、話題を変えてみることにした。





「ねぇ、それより今向かってるとこって…

饅頭を初めて作ったとされる饅頭和尚が建てたお寺、『饅頭寺』の学校だよねー」



「そうなのか?炯詳しいな!」

「いやどう考えても違うだろ、円堂!」

「だいたい、饅頭和尚ってなんだよ…;」

「んー饅頭頭の和尚さん?」

「いや、炯ちゃん、意味不明だからね。」

「そもそも、漫遊寺だぞ」

「あらら、そうだっけー?」











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