雨の波紋
□第1章 時雨
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細かい線が降っている。
朝はいつも気分が悪かった。
「今度試合よね?調子はどう?」
「絶好調。」
「そう!良かったわね!
…あ、もうこんな時間、遅刻するわよ。」
「あ、やべ!行ってきます!」
取り残されている。
何処で間違えたんだろう。
あちらには手が届くものも、私には届かない。
時間は凍りつき、此処だけに訪れないような、そんな気がする。
「…お母さん、私も行ってくるね」
「あら、炯まだいたの?」
先程とは別人みたいな声色だった。
…違う。
きっと、方位磁石が必ずN極を北に向けるように、決まっているのだ。
炯は乱暴に鞄を背負った。
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