last letter
□danGerOus wOrk
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金曜日の放課後。
昼休みや普段の放課後と比べれば、多少生徒の入りが少ない学食で突っ伏していると、少し離れた席に座っている女子の会話が聞こえてきた。
内容は、明日からの遊びのプラン。どうやら社会人と付き合っているらしいその人は、2日間の休みを使って泊まりがけでデートに行くらしい。しきりに同じグループの友達に、相談なのか自慢なのかわからない話をしている。
それを聞き流しながら、どうして明日から休みなんだろうと憂鬱な気持ちになっているオレは、彼女もいない寂しい高校一年生だ。身長は166センチで、えりあしや耳周りを短めにしたコンパクトショートヘアの黒髪。辛うじて特徴を挙げるとすれば、目が垂れ気味であることだけの、平凡な学生。
もちろん女子に声をかける勇気もなければ、女子から声がかかることもない。だから1人寂しく、学食のテーブルに突っ伏しているわけだ。断じて、好き好んで1人でいるわけじゃない。
しばらくそうしていたけど、終わらない女子の会話にもそろそろ飽きてきた。苛々するというよりも、幸せいっぱいの元気な声に、こっちの気力が吸い取られていっているような気がしてくる。要は、疲れてくる。
「…明日から休みなのに…」
1人口の中で呟いて、頭の向きを女子がいるテーブルの左向きから、右向きへと変えた。完全に音を遮断することは出来ないけど、少しだけ音量が下がって聞こえる。
今日は金曜日。明日、明後日と、休みが続いている。
週休2日制というのは学生の身分であるオレにとっても本当に素晴らしくて、朝に早起きしなくてもいいし、授業もない。何よりも学校に来なくてもいいと、いいことづくめだ。可能なら、週2日と言わず、3日でも4日でも休みにしてもらいたい。
でもそこまで考えが至ったところで、ずぅん、と頭が重くなった。
休みが増えて学校に来なくていいのは、かなり魅力的だ。日曜日が増えて、遊ぶ時間も増える。
ただ学校に来なければ来ないで、家にいる時間が増えてしまうということを失念していた。
いまのオレには、学校に来るのと同じくらい、家にいるのがキツい理由がある。それを考えると、キリキリと胃が痛い。
別に家も学校も嫌いではないのに、どうしてこんなに胃痛を患わせなければいけないんだろう。
自問してみても、答えをちゃんとわかってるだけに胃が痛いんだと再認識しただけだ。