last letter

□trouBle oN FRIDAY
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「…今日、俊祐…兄貴の、友達とか家に来るから、ちょい気が重いだけ」

「本当にそれだけか?」

「うん、まぁ…。兄貴の友達、濃いキャラばっかだから、さ」

 疑わしそうな、窺うような視線を寄越してくる由輝に、心配してくれてありがと、と笑ってみせる。
 嘘じゃない。ただ、丸ごと真実を伝えたんじゃなくて、かなり割愛させてもらったけど。
 あまり追求されると困るかな、と思案していたところで、タイミングよく、学食に利用時間終了の音楽が流れ始めた。授業終了からおよそ4時間。きっと外に出れば、夜が訪れている。
 本当は、出来るならもう少し粘ってから家に帰りたい。
 でもたかが1生徒の都合で利用時間が延びるはずもないし、そもそもそんなことをして帰りが遅くなったら、もっと面倒臭いことになるのは必死だ。
 だから仕方なく、椅子から立ち上がる。

「学食も終わるし、オレそろそろ帰るよ。由輝は?」

「ケンが帰んなら、俺も帰る」

 さも当然のように腰を上げた由輝に、多分由輝を鑑賞するために残っていたんだろう女子も次々に立ち上がった。中身が王様な由輝は、周囲に与える影響力の大きさも王様クラスだ。
 よくこんな奴が、オレと一緒にいるよな。
 嫌味でもなんでもなく、純粋に心からそう思う。
 素でモデル体型の由輝と違い、オレは身長166センチ、髪型だって、えりあしや耳周りを短めにしたコンパクトショートヘアで、自分で言うのも悲しいけど、物凄く高校生っぽい。目も少し垂れ気味だし、正直、人目を引く容貌ではなかった。せめてもう少し、上背があったら。
 うーん、と唇を尖らせているオレの腕を、由輝が有無を言わせずに引っ張る。

「出口混むだろ、さっさと行こうぜ」

「あ、あぁ」

 頷いても放してくれない由輝に引き摺られるまま、動き出した人並みの間を縫うように進む。先を行く由輝はまるで道を作ってくれてるみたいで、居たたまれないような、こそばゆいような気持ちにさせられた。
 学食を出たそのままの足で、生徒玄関へと連れ立って向かう。学食の人口密度が高くてわからなかったけど、やっぱり放課後だけあって、廊下ですれ違う人は少ない。それに玄関に近付くに連れて、風が冷たくて仕方なかった。

「なんかもう冬だよな、寒いし」

「そうか?」

「風、冷たいじゃん。手袋とかまだ要らないって思ってたけど、もう必要かも」
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