短編集

□ヒーロー
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「○ッキー、今日も一日お疲れ様!」


パプワ島での新しい生活が始まってからリキッドはこのヒーローに一日の終わりに必ず話しかけていた。

自分が置いてきたヒーローとは別の、このぬいぐるみはハーレムから貰ったものだ。

「元気かなーあっちの○ッキー…。」






そもそもは、酔ったハーレムがリキッドの部屋に押しかけていたした事が発端だった。
ベッドの隅に転がっていたヒーローが汚れてしまうという悲劇が起き、その時ばかりは怒り狂った上に子供のように泣き喚いて相当ハーレムを手こずらせた。

その数日後にハーレムが『これで文句ないだろ』と押し付けて来た新品のぬいぐるみが今ここにいるヒーローだった。

『ったくこんなもんがちっと汚れたからって大騒ぎしやがって…。』

『元はと言えば隊長が悪いんでしょ!!俺は嫌だって言ったのに!!』

『ハイハイ、だからキレイなのを連れてきてやっただろ。』

『それは嬉しいッスけど…本当にいいんですか、貰っちゃって。』

『リッちゃんが貰ってくれなきゃどーすんだよ。俺にぬいぐるみ持てってのか?』

『…ははっ、確かにそうッスね。隊長にぬいぐるみなんて似合わないや。…ありがとうございます。』

『おう…。』


それでもずっと大事にしていたヒーローを捨てる気にもなれず、洗ったらかなりボロボロになってしまった。

裁縫趣味のドイツ人に修理を依頼したら何故か自分仕様になって戻ってきて、それを見たハーレムに大爆笑されたが自分は憧れるヒーローに近づけた気がしてちょっと嬉しかったのは内緒である。




「もう捨てられただろうなあの○ッキー…。」

自分がハーレム相手でもくってかかるほど大切にしていた○ッキーを置いてきたのは決心の強さを表したかったからだが、いかんせん大分ボロボロだったからゴミとして認識されただけかも知れない。

自分似のヒーローの末路を想像して切なくなってしまったリキッドは、今腕の中にある新しいヒーローを抱き締めた。


「あの○ッキーのためにも頑張らなきゃな…。」


そうつぶやいてリキッドは明日のために目を閉じた。
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