短編集
□At the bigginig of a day.
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「隊長…隊長ってば…!」
耳元で呼ばれてもまだ微睡んでいる意識ではまるで窓の外から呼びかけられているように声が遠い。
「んー…。」
聞こえてるとばかりに呻いてみせるがまだ起きる気はなく湯たんぽを抱き抱えるがごとく腕の中の温もりにより強く抱き付く。
「だあっ、もーいい加減に起きろよオッサン!!離せッてば、トイレ行きたいんだよ!!」
「あン…?」
切羽詰まった怒声と共にユサユサと揺さぶられてハーレムの意識は浮上した。
まだ重いまぶたを無理矢理開いた目に、腕の中からスルリと抜け出て多少よろめきながらすっ飛んでいく後ろ姿が映る。
「…俺様の眠りを邪魔するたあいい度胸だぜ坊や…。」
攻撃スイッチが入った途端にハーレムはガッツリ覚醒した。
スッキリ晴れやか気分で戻ってくるリキッドが朝っぱらからまたも艶めかしい悲鳴を上げるまで後少し…。
*********
四年後。
相も変わらず寝起きの悪いハーレムに毎度リキッドが懇願する構図にあまり変わりはない。
「隊長ってば起きて下さいよ〜。」
「ん〜…ヤダ。」
「勘弁して下さいよ、ちみっ子達の飯作らないとなんないんですから。」
「…仕方ねぇなあ…。」
腕の中の温もりを惜しむように一度抱き締めてから力を緩める。
すんなりと解放されてリキッドはいそいそと身支度を整える。
「…隊長ってばなんだか優しくなりましたね。」
「んだと?俺様はいつだって優しいだろうが。」
「(どの口で言うか)…まあそうですけど、もっと優しくなったっていうか…やっぱりこの島のせいですかね〜?」
「…知るか。」
ごろんと不機嫌な声であちらを向いてしまった背にリキッドは話しかけた。
「俺はこっちの方が好きッスよ。」
「…早く行けよ、チビ共が待ってんだろ。」
「はいはい。」
向こうを向いたままの耳がほの紅いのを見てリキッドは微笑んだ。
「また来ますね。」
「おう。」
パプワハウスへの道すがら。
(なんか隊長優しくなったっつーか…可愛くなった…?)
四十路オッサンには似合わねー形容詞だなぁと自分で突っ込まずにいられない。
「さあって、今日もしっかり働くぜ!!」