幻滅の世界

□誰が為に花は咲く
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「あ〜暇だな…リキッド、尻貸せ」

珍しく数日以上任務が入らず、平和が続いていたある日の夕刻、逢う魔が時―――リキッドの地獄はそのあまりに軽い一言から始まった。



「は?何言ってんスか気持ち悪りィ」

思いっきり眉をしかめて吐き捨てたのは極めて自然な反応だったが、嫌悪を露にしたのが不味かった。

「相変わらず生意気な口の聞き方しやがる。四の五の言わず俺が貸せって言ったら黙って貸せばいいんだよ」

半ば暇潰しに新人をからかうために投げた単なる戯れ言だった筈だったが、強い反発には征服欲が刺激されるものなのだ―――

「嫌ッスよ!なんスかその横暴なセクハラ命令は。…触んな、離せよ!!」

リキッドはヤンキー小僧だが案外信心深い。
同性愛が教義に背くか否か、神学家も議論百出で今も意見の分かれるところではあるのだが進歩的な人々の間ではともかく一般的にはまだまだ昔ながらの価値観が根強くてタブー視されている場合が多く、リキッドもまず嫌悪感が先に立つ。
軍隊は女日照りだからわりとあることだとは小耳に挟んでいても、自分が巻き込まれるのは真っ平御免だった。
そんな、まだ若さゆえの潔癖症で必要以上に過敏な反応をしてしまったのがハーレムの悪戯っ気や征服欲をいたく刺激したのかもしれない。

「上官様に向かって口答えとか、相変わらず学習能力ねぇな。ま、嫌がる奴を無理矢理ってのも面白れェが。」

「ふざけんなよこの外道がッ…!?」

罵る途中で軽く頬を張られ、衝撃によろめくリキッドは胸元を軽く押されただけで後ろに倒れ込んだ。

「今日からお前も外道の仲間入りだ。その内、男の逸物見るだけでおっ立てて欲しがるように開発してやるぜ」

「嫌だ、触るなッ…!!」

暴れようともがく腕をひとまとめに頭上に押さえつけ、一方の手で衣服をはだけて肌を撫で回す。

鳥肌を立てて体をよじるリキッドだったが、上にのしかかる男をはねのけることは出来なかった。

「止めろ止めろ、止めろったら!!」

ズボンのジッパーを下ろされてリキッドは悲鳴のような絶叫を上げる。

「さて、坊やのご尊顔を拝ませてもらうか。」

「止めろッ…ひっ!」

下着の合わせ目から引っ張り出された性器をギュッと握られてリキッドの腰が衝撃に揺れた。

「なかなか可愛い坊やだ。まだ使い込んでねェんだろ、キレイな色してやがる」

「やっ、やめっ…あっ、」

裏スジの敏感な部分をくすぐるように撫でられてリキッドが腰を退く。

「ここ気持ちイイだろ?男同士ってのはよ、どこをどうすりゃいいか分かってっから何も余計なことを考えなきゃセックスの相手には最高だぜ。どんだけ中出ししたって孕む心配もねぇしな」

「やッ、あッ、」

暗に後で中出ししてやるからなと言わんばかりの禍々しい言葉を並べ立てながら、袋の付け根を弄り手中の玉を軽く揉み合わせると、次第に竿が熱を帯び硬度が増してムクリと頭が上を向く。

「反応し出したぜ。体は正直ッてやつだな」

「こんなこと…ダメっ…ああッ!」

ツルリと薄皮をずり下ろされて亀頭を剥き出される頃にはその先端は血潮に赤く色付いていた。

「エッチなこと考えるだけでおっ勃つお年頃のくせに我慢すんなって。ほれ、こっちのリキッドちゃんは期待でもうパンパンに膨らんでるぜ。我慢しきれずに涎までダラッダラ零して素直なもんだな」

「やだっ…や!」

自分の意図せぬ痴態にリキッドはうろたえ泣き出したくなる。

「そんなに怯えんなって。何も食い殺そうってんじゃねぇ、ちょいと暇潰しセックスに付き合えってだけだろ。…まあその怯えた顔はなかなかそそるからいいけどよ」

可笑しそうに肩を揺らす男は、悔し涙を目尻に滲ませて恐怖と怒りに震える少年の耳朶を軽く啄むと更に煽るように舌を耳孔に挿し入れて来た。

「ひッ…!」

ピチャリと音を立てて生暖かく柔らかいものが感覚器官をダイレクトになぞる感触に、リキッドはゾワッと肌を粟立たせて首を竦める。
そのままチロチロと擽るように舌先が軽く鼓膜の直ぐ側で蠢く度、悪寒のようなむず痒い戦慄が体内を駆け巡る。

「乳首もまだ触ってねぇってのにさっきからビンッビンに尖ってるぜ。お前相当エロい身体してんのな」

「嘘ッ…だ、」

「これでも嘘だってのか?」

男がその指先をリキッドの胸に這わせ、これ見よがしに乳首を摘みこねくりまわすと確かにコリリと硬い感触がリキッドにも伝わった。
カアッと羞恥で頭に血が昇り、尚更必死で拒否しようともがく。

「や、だッ…、離せッ!」

「強情もあンまりだと可愛気ないぜ」

呆れた声で男は言うなりリキッドの足首を捕らえて引き倒した。

「痛ッ!何しやがるッ!?」

「あんまり暴れられっと面倒くせぇからな。」

リキッドの腰からシュルッとベルトを片手で引き抜いた男は熟練の職人がするような手際の良さで獲物の両腕を後ろ手に縛り上げてしまった。

「な、」

リキッドの両腕を拘束具に委ねたお陰で空いた手が再びリキッドに掛かる。
腰を捕らえられてひっくり返され、足首を掴まれたかと思うや否や両脚を左右に大きく開かされた。
反りかえったまま首を振る性器も緊張に締まった後孔も何もかもが男の眼前で丸出しだと気付いた時には男の膝が脚の間に割り込んでいて閉じられなかった。

「嫌だッ!!そこに触んなぁ!!」

尻たぶを嫌がらせのように大きくゆっくりと揉まれ、更に谷間の奥へと無遠慮な指が潜り込んで来たのを感じたリキッドが戦慄し体をよじって絶叫する。

「ヤレヤレ、往生際の悪い奴だな」

「ひ!?」

突然肌に感じた冷たい感触にビクッとリキッドが跳ねる。
首を捻って後ろを見れば男の手にはローションのボトルがあった。

「カウパーだけじゃ初心者にゃキツいだろうしな。ちゃんとほぐしてやっから力抜いとけよ。俺様ってば優しーだろ。」

ブニュブニュブチュブチュッと耳障りな音を立てて更にローションが絞り出され、尻の谷間をドロリと流れる。
冷たい感触もさることながら、その音が妙なまでにリキッドに迫ってきた。

これからどう足掻いてもこの男に犯されるのだと。

「や…だ、」

「そんな顔しても可愛いだけだぜ」

屈辱や怒りすらも忘れて怯えたように身を竦ませ首を振る様子が初で純なリキッドの本質をさらけ出していて、男はひどく楽しくなった。

新雪に初めて己の足跡を刻みたいという、子供のような無邪気な衝動が湧き出すのを感じる。それは無邪気なのと同時に征服欲の発露とも言うべき残酷な衝動でもあった。

「暇潰し…の筈だったんだがなぁ」

リキッドをからかって暇潰しする筈がいつしか本気でリキッドの体を攻略することへと目的がずれたことを自嘲混じりに独白しながら男はリキッドの肌に零したものをヌルヌルと塗り広げ始めた。
テラテラと濡れ光る若々しい筋肉の感触を観賞しつつ、たっぷりと手に取ったローションで火照った玉袋を軽く握り込み揉んでやると、息を飲み込むような音とも、潰れた悲鳴ともつかない音がリキッドの喉から漏れた。

「お前をもっと見せてみろ」

唇を噛んで顔を伏せた少年の意志に反して熱く脈打つ竿の敏感な裏筋をヌルヌルと愛撫し、悶える肢体に覆い被さって耳元に息を吹き込むように囁いてから男はぺニスに絡ませていた指先をゆっくり尻の奥へと滑り込ませた。

「うああッ!?やめろッ!!」

ゆるゆると穴の縁をなぞるように遊んでいた指がやがて明確な侵入の意図を持って潜り始めると、リキッドは絶叫と共に背をしならせ跳ねた。

「おっと危ねぇ…いきなり暴れっと怪我の元だぜ」

「やめてくれっ!やめて…お願いッスから…!」

「強情だなぁ。まあ攻め甲斐があるが」

プライドを捨てた哀願もサラッと無視して男は指先を更に奥へと進める。
阻もうと収縮する動きも一旦侵入さえしてしまえばむしろ引き込まれるようで、指先が深々と根本まで潜るのに大して苦労はなかった。

「肝心なのはこっからだぜ」

薄い粘膜を傷付けないよう爪先に気を配りながら滑らかな襞を探る。

「いや、だ…抜いて、」

「まだ指一本しか入れてねぇってのに情けないこと言うなっての。どうよ、ここら辺りか?」

「ふあッ…!」

前立腺の位置を推し量って指先を蠢かすと、これまでとは違い、鼻にかかったような力の抜けた声がリキッドから漏れて男がニィと唇を吊り上げた。

「ひッ…やはッ、あッあッ…!?」

そこを押される度にまるでペニスの先を灼くような電流が走り抜けてリキッドの下半身がビクビクと爪先まで痙攣した。

「やっぱりここか。どうよ、チンポも一気にビンビンだなあ?感度はよしと」

「ひィ!」

「いきなり突っ込むとこっちも難儀するしな、前戯はしっかりしてやるから安心しとけ」

犯す指先はそのままでベッド脇のローテーブルを探り、引き出しからやや小さめの卑猥な張り型を引っ張り出す。それにローションを新たに絞りだして塗りたくり、まだほころびも微かなアナルへ押し当てた。

「何を…やめ、」

「ただの初心者向けオモチャだ、心配すんな。さあて、解しがてら指じゃ届かないとこまでじっくり可愛がってやるぜ」

ゆっくりと先端を回し入れて角度を見定めながらズブズブと押し込み始める。

「痛あぁッ、やめろッ…!」

「痛いのは緊張のし過ぎだ、力抜けよ」

「嫌ッ…!」

侵入して来る異物から逃れようとばかりにリキッドが体を捻りじたばたともがく。

「ヤレヤレ」

「あはあぁッ!?」

男の無遠慮な手に急所を巧みな手付きで一扱きされリキッドが不本意な甘い悲鳴を上げた瞬間、体の緊張が解けた隙を突いてオモチャがズブッと押し込まれた。そのままグイと奥を探るように軽く弄られると尻がキュッと反応する。

「あああ!」

「どうだ?ここをダイレクトに刺激されんのは…すげぇだろ。これの味を覚えたらオメェ、女のユルい穴に突っ込む位の刺激じゃイケなくなるぜ」

「嫌、」

「その内、ケツにぶっといおチンポぶち込んで下さいって自分から穴晒して尻振りながら強請る淫乱になっちまうかも知れねぇなあ」

「んな、わけ…あるか…ああっ…、」

「欲しくなったら言えよ〜?腰が抜けるくらいたっぷり突き可愛がってやっからよぉ」

「誰がッ…あッああッあッ!?やめろぉ!!」

強情な台詞を繰り返すリキッドにいささか業を煮やしたか、男がオモチャのスイッチを入れ、ウィンウィンという振動と共にリキッドの中が掻き回され始めた。
サイズも振動も控え目とはいえ、初めて味わわされる直接的な未知の刺激に耐性も何もないリキッドは悲鳴を上げてのけぞった。

「どうやらお気に召したようだなァ。がっぷり食いついてるぜ?手ぇ離してもホレ、しゃぶりついたまま抜けやしねぇ」

「や、ああ…ァ、」

言葉通り、刺激に反応して尻がヒクつく度にくわえ込まされたオモチャも揺れるが、抜けるどころか深々と刺さったままそこで淫靡にのたくり続けている。
グイグイと喰い締める自分の様子をこれ見よがしに告げられて、リキッドは歯を食いしばって顔を伏せるしかなかった。
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