☆パラレル☆
□古典を読もう!
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『沙石集』より、
児の飴くひたること
昔々あるお寺にドケチな和尚さんがおりました。
和尚さんは度々飴を作っていましたが、小僧さんには「これは食べたら死に至る毒だから食べてはならぬ」と言って食べさせてはやりませんでした。
小僧さんは飴が欲しくて欲しくて仕方ありません。
そんなある日、和尚さんはちょっとした用事で寺を留守にしました。
小僧さんは早速しっかりとしまわれていた飴を取り出します。棚から降ろすときうっかりこぼしてしまい、頭や着物の袖にも掛かりましたが構わずにお腹いっぱい食べました。
満足するまでしこたま食べた後で小僧さんは和尚さんが大切にしている壺を庭石に打ちつけ割っておきました。
さて和尚さんが帰ってきますと、小僧さんがシクシクと泣いています。
何を泣いているのかと尋ねますと、小僧さんはこう答えました。
「実は和尚様が大切にされていた壺を誤って割っちゃったんです。
和尚様に知れたら勘当されてしまうと思うともう生きてられないと思って、いっそ死んでしまおうと思って。
それで、和尚様が『食べたら死ぬ』と仰っていた毒を食べたてみたのですが死ねなくて。
量が足りないかと思って苦しくなるまで食べてみたり、浴びてみたりもしたけど今も死ねないんです。」
そう言ってさめざめと、一層激しく泣いてみせるのでした。
結局和尚さんは飴を食われ壷を割られ、ケチで得る物は何もなかったそうです。