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□Calm
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ハーレムと両思いになったからといって特別日々の暮らしが変わることはなかった。

「元々エッチもしまくってたっつーかヤられてたし、飯も集られてたし、どっちにしてもチミッ子の手前大っぴらには出来ないし。」

シャカシャカと卵白を泡立てて本日のおやつを作成しながらリキッドは一人ごちた。

しかし確かに何かが変わった。

例えば――

ふと目が合った時にひらめく穏やかな笑顔だとか。

ふと肌が触れ合った時のときめきだとか。

互いを求め合った時の幸福感だとか。


それは本当にささやかながら劇的な変化でリキッドの心を温めたし、かつては恐怖や嫌悪の対象だった行為が今では幸福のそれになってしまったことは自分でも驚くばかりだった。

時折ハーレムの絶倫ぶりに泣かされはするものの、あの目に見つめられて耳元で愛を囁かれると逆らえない自分がいる。

「ナニこの初めて恋する乙女みたいな反応…恥ずかしッ!!」

リキッドは顔が火照る思いで自分に突っ込むが、ハーレムと共に過ごした時を思い出すと胸がキュンと甘く震えてしまうのは恋愛経験の乏しい身では無理もないといったところか。
経験が少ないのは他ならぬハーレムのせいでもあったわけだが、一方で恋愛めいた知識と言えば子供の頃から慣れ親しんだのがディ○ニーの恋物語であり、それらに裏打ちされた恋愛観では「一途」にもなるというものだろう。

「あ、やべ…卵多かったか。」

いつの間にかチミッ子のおやつの分としては多すぎる分量をかき混ぜていることに気付いてリキッドは溜め息をついた。

「…隊長来るかな。」

「来て欲しいんだろ〜。あからさまに作り過ぎだぜリっちゃん。」

ポソッと誰に言うでもなく呟いたら思いがけなく返答があって、リキッドは飛び上がらんばかりに驚いた。

「うえッ!?たたたた隊長ッ!?いつからそこに…!!」

「乙女みたいで恥ずかしいってとこからだな。見ててこっちまで訳もなく照れくさくなっちまったぜ。」

「ひ、人が悪いっすよ!!来た時に声くらい掛けて下さいって。」

「掛けようとしたらリっちゃんのモジモジ百面相が面白かったからなぁ。」

笑いながら寄ってきたハーレムは羞恥に一睨みしたきりそっぽを向いたリキッドの頭をかまわず撫でて自分の方を向かせるとキスをする。

「本日のおやつゲット…だ。」

「人をスナック菓子みたいに…。」

唇を尖らせ文句を言っても振り払いはしないリキッドだった。
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