01 / こんにちは。 大きな鉄製の門を開け、玄関までの煉瓦の階段を上がる。 全部を1からお母さんがデザインして作った二人の自慢の家。 仲がよくて優しい両親が大好きだった。 もう二度と、逢うことは出来ないけど。 ステンドグラスの綺麗な装飾が施されたドアに、同じデザインの鍵を差し込み開ける。 『ただいまー‥』 「おかえりー!」 ドアに吊るされた金属音を鳴らすモビールに混じって、 懐かしい、元気なお母さんの声が聞こえたような気がした。 現実逃避してしまいたいけれど、私は現実を受け止めたい。 目を伏せ、深く深呼吸をして中に入る。 私以外には誰もいない、独りぼっちの大きな家。 . |