□パイナップルの妖精
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オレンジ色になりかけている空を見ながらゆっくりと歩く。


いつもは完全に夕日になった時間に帰るからこんな早くに帰れるのは珍しい。



『んー ‥ 甘い』



朝、家を出るときにお兄ちゃんに貰った飴を口に入れる。


その飴は2層になっていて、ある程度まで溶けると味が変わるもの。


組み合わせは沢山あったけど、適当に3つ貰って家を出た。



『なんだか今日はついてるなあ』



補習は免除になったし、お兄ちゃんは優しかったし、獄寺くんにも睨まれなかった。


今日は運がいい日だ、なんて。気を緩めすぎたのか。


顔を綻ばせながら2つ目の飴を探し、ポケットの中に手を入れる。



『うわ、前言撤回。ついてないや』



いつもポケットに入れている携帯が入っていない。


恐らく机にかけてある体操服入れの袋の中だ。



『ああー ‥ 』



もう少しで家なのに。ついてない。



がっくりと肩を落として、来た道を引き返す。


せっかく早く帰れたのに。


きっと家に着く頃は何時もと変わらない時間だろう。



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