テニプリ連載

□11球
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『んっ…んー…あ、れ、英二…?』
「あっ起きた!!不二ー!アカリちゃん起きたー!!」


上半身を起こすと大丈夫?と英二が背中をさすってくれた。

いや、痛いのは頭なんだけどね。背中じゃないよ。
でもありがとう。痛いの頭だけど。


「アカリ!大丈夫?体の調子は?!」


ドア付近に配置されているベンチから、半目で走ってくる不二に軽く恐怖を覚えた。
いや、でも倒れる前の不二とは大違いで、格別に優しい。
あの意地悪で魔王な人はどこ行ったの。


「アカリ…」
「そうだ、おれ跡部にも知らせてくる!!!」


英二が部屋から出て行った後も、ずっと不安げな顔をして見つめてくる不二に
元気だよと言うように笑顔で小さく手を振ると、突然視界が暗くなり圧迫感。


『えっ』


途端にふわりと香る香水と汗の匂い、ドクンドクン鳴り響く心臓の音。
少しだけ上を向けば私の髪に顔を埋めてる不二だった。


「ごめん…僕はなにをしてるんだろう」
『…ほんとですよね』


少しずつ私の顔は真っ赤に染まっていき、軽く胸板を手で押して抵抗してみたけど、
一向に離れてくれないから仕方なくされるがままになった。

しばらく沈黙が続き、不二は軽くため息を付いてモゾリと私の髪の毛に更に顔を埋める。


「…やっぱりどうしても、好きな子はいじめたくなるんだ」
『へぇ……え?』


それはあの、ある意味問題発言ですよ不二さん?

事の意味を知った私は、更に顔が赤くなった。
ゆっくりと離れてく体温に寂しさも感じたけれど、やっと解放されたと安心をして胸を撫で下ろす。


『えと、それでどうしたんスか急に…』
「…」


照れ隠しのつもりで口調を変えてみたけど、返答がないからしばらく不二を見つめてみる。
すると顔が赤くなっているのがよくわかった、赤面してやがるこいつ。
あの笑顔を貼り付けたような不二がだ。
顔赤してやがるよ。


『…顔赤いですね』
「うん、そうだね、ちょっと今日の記憶消してくれると嬉しいな」
『えっ?!いや、そんな無茶な』


不二は照れたように片手で口元を覆い、優しい手つきで私の頭を撫でた。
その手は少しずつ頬へと下りてきてそのまま頬を撫でられた。
閉じていた目がまた少し開かれる。

うん、怖い


「なんだか今日は僕も調子が悪いみたい…」

ほんとにどうしたんだこの人は、照れを隠す私の身にもなれってんだドチクショーが。

サワリサワリと頬を撫でられていると、廊下の方からドタバタと足音が聞こえてきた。
それを合図に優しい不二様が目をまた細め、頬を少し抓られる


『えっ』
「もしも今日のこと忘れなかったら、英二のこといじめるからね?クスッ」


英二いいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!
君にいま魔の手が近づこうとおおおおおおおおおおおおおおおおお


痛いっ、ちょっ、ほっぺた抓ってる手がだんだん強くっ!!!


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