the past days

□No title
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ふわり、ふわりと粉雪が舞い降りてくるのを見上げながら、白い息を零す。


「……幾千の魂が、舞っているよう…だねぇ。」


まるで世界に自分しか居ないような錯覚をおぼえながら、ゆっくりと歩を進める。

徐々に積もり始めた雪に足跡が残る。


「おや?」


新雪を踏む感覚を楽しみながら歩いた視界の先。
協会の宿舎が新人の為に空けられるのを機に、少し前に移った新しい自宅。
そこへ入る階段の前にポツンッと佇む人影を見つけ軽く頭を傾げる。
それが協会の、自身でも目を掛けていると自覚のある相手だと気付き、少しだけ歩調を速める。


「どうしたんだい?ウィリアム」


すぐ傍まで近付いて、髪に積もり始めていた雪を軽く払ってやりながら、声をかける。


「いつから、ここに?小生を待っていたのかい?」

「………」


俯いて影になった表情を無理に見ることはせず、ただ指で触れた頬の冷たさに眉をひそめる。


「こんなに冷えて、身体に悪いじゃないか。とにかく中へ」


そっと手を取り、嫌がらないのを確認して引けば、ゆっくりと足が動き付いてくる。


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