primavera【プリマヴェーラ】

□はじめの一歩
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今、フィリアに起こされ、寝惚けながら返事をしているのは、双子のチェインとシャインだ。可愛らしいウェーブのかかった甘栗色の髪に、清んだプルシャンブルーの瞳。明るく、笑顔が似合う彼等は、悪戯っ子で有名だ。黙っていれば、とても絵になる綺麗な二人なのだが、口を開くと小悪魔という言葉がしっくりくる子供へと変貌を遂げる。それでも微笑ましく見えるのは、彼等の根が良いからなのだろう。
片時も離れず一緒にいる彼等には、彼等だけの世界がある。誰も入り込む事の出来ない、不思議な世界。あの子達が常に共に居るのは、血を分け合った兄弟【かぞく】だからか。それとも、何か理由があるのか。知っているのは、彼等だけだ。


「『おかえり』の前にとっととベッドから降りろ!」

「いいじゃん。フィリアのベッドじゃないんだし」

「そぅそう、ショパンのでもないし」

「そういう問題じゃない!」

「「へぇ、じゃあ、なんでダメなわけ?」」


「眠り姫」、エマーティコ・ジョコラーレには、そう呼ばれている一人の少女がいる。生まれたその日に、何者かの手によって、長い眠りにつく事になってしまった子だ。長い時間を経た今も尚、静かに眠り続けている。誰がどのような目的で封印したのか知る者は皆、堅く口を閉ざしている。謎多き姫。
彼女は今、エマーティコ・ジョコラーレの奥にある小さな建物の中に居る。彼女が眠っている部屋は、沢山のぬいぐるみと華やかな花々に囲まれた、温かい色に包まれた女の子らしい部屋だ。


「寝ている女の子のベッドの中に堂々と入って行くな!」

「「えー?なんでダメなの?」」


背景を燃え盛る炎一色に染めたフィリアのもとに、双子は口角を吊り上げながら、次々と油を注いでいく。


「相変わらず、仲良いね」


ショパンが慣れた様子で溜め息をついた。






「お紅茶、入りましたよ」


甘いテナーの声色の持ち主、ファレムが、自慢の庭の一角にあるテーブルに、四つのティーカップとお菓子の乗ったお皿を置いた。


「はい、どうぞ?」


病で塞ぎがちなここのリーダーに代わって仕切る事の多い彼は、何でも出来る凄腕の持ち主だ。常に笑顔の彼は一見、とても優しいお兄様だが、時々(?)背後にどす黒いオーラを纏う恐ろしい人でもある。「二重人格の典型」と、言っても過言ではないだろう。
彼は常にお気に入りの帽子を持ち歩いているようだ。



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