gemello【ジェメッロ】

□麗美
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ポケットに手を突っ込み、気だるそうに俯きながらながら歩く璃惡に、水月は子供らしい純粋な笑顔を向けた。


「……そうだな」


水月の頭に手をやり、璃惡は眉間に皺を寄せたまま微笑した。


「そうだ、目的を忘れるところだった」


朔彌は突然立ち止まった。
璃惡は怪訝そうに眉を潜め、綺音と水月は朔彌の顔を見詰める。


「なんだよ?」

「兄さんが璃惡君の事、心配してたよ?なんでも、璃惡君が大怪我したがどうたらって」

「は?」

「早く帰ってあげたら?」

「……あ、あぁ……」


璃惡は慌てた様子で綺音と水月の手を確りと握り、走って行った。


「……なんだ。やっぱり立派な保護者様じゃない」


朔彌は厭きれ混じりの溜め息を吐いた。
瞳を瞑った朔彌は須亂の病室の方を見る。誰もいないはずの廊下に漂う甘い香り。静寂に聴こえる儚げな旋律。
朔彌は歩き出した。
空は青色【デイドリーム】に輝いている。






「あ、お帰りなさい……璃惡って子持ちだったんだね。兄さん、知らなかったよ。いつ拵えたの?」


綺音と水月の手を確りと握ったまま家に飛び込んできた璃惡を、煙水晶【スモーキークウォーツ】の髪と金緑石【クリソベリル】の瞳を持つ美男が、ホットココアを片手に温かく迎えた。璃惡は不機嫌面になり、舌打ちをする。


「おい、玲惡【レオ】。お前までそう言うのか?どこをどう見たら俺の子になるんだよ」


木目の美しい屋根、丸太を積み重ねた壁、艶やかな植物達が咲き乱れる庭。沢山の木々に囲まれた、玩具の家のようなアンティークな屋敷の中は、魔法使いが好むような道具や書物で溢れている。蝋燭の似合う室内はチョコレートの香りでいっぱいだ。


「あれ?違うの?」

「違う!……そんな事より、俺が大怪我って、何処からの情報だよ」

「あー……風の便り」

「は?」


璃惡の手は、まだ綺音と水月の手を包んでいる。玲惡は背を向け、笑う代わりに、ココアを飲んだ。


「璃惡の双子の兄の、玲惡って言います。宜しく」




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