gemello【ジェメッロ】

□戦備
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「……じゃ、行くか」

「「はい、宜しくお願いします、璃惡兄さん」」


目を見開いた璃惡は、光圀を睨み付けた。光圀は欠伸をし、仕事道具を片付け始める。


「……とりあえず、役所か……」


璃惡は気だるそうに歩き出した。
静穏な青色【デイドリーム】の空。佳麗な白色【ミルキーホワイト】の雲。清純な微風。
冒険の始まりだ。






璃惡に率いられ、無事に役所に着いた綺音と水月は役所で名前を記入した後、金貨の入った袋を手に入れた。その後、旅人から古惚けた地図を頂き、お使いに来ていた見習い神父から謎の薬を頂いた。


「……やっぱりさぁ……」

「……だよなぁ……」


二人は璃惡から貰った鞄の中を覗き込んだ。溜め息が止まらない。


「何ぼさっとしてんだ?行くぞ?」


良き兄貴璃惡は、仲間Tと言った所なのだろうか。とても心強いが、申し訳ない気もする。
璃惡が開けてくれた扉を潜り、二人は外に出た。
二人の視界には、二人の想像している世界とは異なる世界が続いている。
中世の貴族が住んでいそうな荘厳な建築物が所狭しと立ち並び、壁を伝う蔦は、鶯色の葉で白い壁を彩る。道は白と黒の大理石で綺麗に舗装されており、丁度、美しい一抹模様を描いている。その道を飾るのは、生きたそれと見間違えるほどよく似ている、巧妙な騎士や騎馬の彫刻。


「……うーん。やっぱりイメージしていたモノと違うかなぁ……」

「……そうだな……」


ぐるりと辺りを見渡すと、そこはメルヘンワールド。光圀の家からはそう離れていないはずなのに、穏やかな西洋風な景色から一変。暖かみのない世界に、身体の芯から凍えてしまいそうだ。


「どうかしたか?」


璃惡は眉を潜め、心配そうに二人の顔を覗き込んだ。


「「いえ……」」

「で、俺達はこれからどうすればいいんですか?」

「あぁ、それは──……」


火山の噴火と間違えるほどの衝撃が、三人を襲った。綺音と水月は、地の底から沸き上がる振動に瞳を閉じた。


「……人形【ブラッディーノ】か」

「「人形【ブラッディーノ】?」」


綺音と水月は璃惡の腕の中で瞳を開けた。


「あぁ、これからお前達が戦う相手だよ」


パラパラと建物の破片が崩れる音だけが辺りに響き渡る。二人は無意識に璃惡の服を握った。


「智陽ちゃん!大丈夫か!?」


建物の残骸の方から青年の叫び声が聴こえてくる。青年が必死に建物の墓場を掘り返しているのが、この距離からでもはっきりと解る。


「……!ヒトがいるのか!」


綺音と水月には見馴れた服装、璃惡にとっては見馴れない衣装を纏う透輝石【ダイオプサイド】の髪を持つ青年は瑪瑙【アゲート】の髪を持つ少女を抱き抱えた。
璃惡は身構え、駆け出す。


「「璃惡兄さん!?」」

「お前達はここにいろ!」

「「璃惡兄さん!」」




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