gemello【ジェメッロ】
□戦備
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「拾った」
「はぁ!?」
光圀は仕事道具を取り出し、腰を下ろした。美男は光圀のもとに駆け寄り、光圀の逞しい肩に手をやった。綺音と水月は、まだ箸を銜えている。
「拾ったってなんだ?ガキは嫌いだったんじゃなかったのかよ?どうゆう風の吹き回しだ?明日は槍が降るのか?……いや、槍が降るのは日常茶飯事か。って今はそんな事はどうでもいい!あれか、猫と見間違えちまったのか?それとも、とうとう孫でも欲しくなったのか?」
美しいモノは乱れても美しいらしい。光圀は彼に構わず作業を進める。金属同士がぶつかり合う軽快な音律が部屋中に木霊する。どうやらここが鍛治屋のようだ
「……綺音と水月だ」
「「宜しくお願いします」」
「あ、あぁ。宜しく」
美男は、状況が上手く飲み込めずに困り果てた様子だった。綺音と水月は落ち着き払っている。
「其奴の名は璃惡【リオ】という」
綺音と水月は璃惡と握手を交わした。
軽快な音律が時計の針の音と重なった。
「……で、拾ってどうすんだよ」
璃惡は光圀に向き直る。拾われた二人は顔を見合わせた。
「知らん」
「はぁ!?」
異世界とはこんなにも愉快な人々で溢れているモノなのだと、二人は初めて知った。
会話が永遠と続いていく。
温くなってしまったコーンスープが冷めてしまう前に、綺音と水月は飲む事にした。
「お前が術を教えてやれ」
「はぁ!?なんで俺なんだよ!拾ったなら最後まで責任持って育てろよ!」
「あ、其奴等はまだ役所に書類を提出してないから、それも宜しく」
「はぁ!?ちょっと待ってくれよ!」
「綺音、水月。お前達にはこれをやる」
二人は勇者の剣を手に入れた。
綺麗な装飾品で彩られた剣は軽く、初めて握るモノとは思えないほど、手に良く馴染む。
「「有り難うございます」」
「……お代は払わねぇぞ?」
璃惡は眉間に皺を寄せ、腕組んで溜め息を吐いた。
「解っておる。儂からの贈り物じゃ」
「……あ、明日は大荒れだな」
綺音と水月は光圀に簡単な扱い方を教わっている。「詳しい事は璃惡に」という言葉は璃惡のもとには届かなかったが、「ここに住んでも良い」という言葉は確りと璃惡のもとまで届いた。璃惡は額に手をやった。
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