gemello【ジェメッロ】

□木漏れ日
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若葉を枝に飾った木々の中、柔らかな日の光を頬に感じた一人の青年が、静かに寝返りをうった。緑の優しい香りが、青年の鼻を擽る。


「んー……?」


透き通った小鳥達の囀り、触れ合う葉の音。青年はふと我に帰り、奇妙な事に気が付いた。ゆっくりと上体を起こし、そっと翡翠【ジェイド】色の瞳を開けてみる。


「……俺は今、どこにいる?」


手探りでお気に入りの布団を探してみるが、その姿は見当たらない。代わりに、青年の足元には、若草色の芝生が広がり、所々に淡い色合いの小柄な野花が咲いている。前後左右を見渡すと、工作が趣味の弟と自分が作った家具はなく、緑豊かな森が広がっている。天井には天文学が大好きな彼が勝手に描いた無数の星達の姿はなく、木々のアーチがある。


「……森?」


何処から見ても、誰が見ても解る事だが、勿論、納得がいくはずがない。


「俺は家で昼寝をしてたんじゃなかったのか?」


青年は透輝石【ダイオプサイド】色のセミロングの髪を弄りながら、必死に記憶を辿ってみるが、それ以外の記憶は全くと言っても良いほど何もない。


「……夢の中で夢を見ているのか」


ぽんと手を叩き、納得した様子で微笑みながら、何やら怪しげな事を口にした。


「なるほどね」


青年は立ち上がり、もう一度、ゆっくりと辺りを見渡した。「冒険の始まりだ」とでも言い出しそうな、嬉々とした様子だ。


「……ん?」


彼は、黒い布の塊のようなモノを発見した。それは地に伏せ、動いている様子は全くない。


「なんだろう……幽霊かな?」


そう呟いた彼の顔からは、恐怖の色は窺えない。


「行ってみようか?」


ふわりと微笑んだ彼は、小走りで黒い塊へと向かった。


「……人間……女の子?」


黒い塊のもとに辿り着いた彼はしゃがみ込み、それを覗き込んだ。いくら待っても動く気配のないそれは、人形にしてはよく出来ている。


「あのー……?」




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