primavera【プリマヴェーラ】

□迷子の迷子の子猫ちゃん
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アリスの誕生日パーティーはあの後、収集がつかなくなり、各々が好きなように楽しんだ後、お酒が回った彼等はそのまま酔い潰れ(正確には、ファレムの手によって酔い潰され)、寝てしまった。本日の主役であるアリスは、訳のわからないまま、完全にその場の空気に流されてしまっている。今も、「私は用事があるので、お先に失礼します。疲れたでしょう?ゆっくり休んで下さいね?」と、ファレムに言われ、どうしたらいいのかわからず、酔い潰れてしまった彼等に、一枚一枚丁寧にタオルケットを掛けているところだ。


「これでよし」


部屋の片付けも終わってしまった為、やる事がなくなってしまった。


「探検、してこようかな?」


彼女はパーティーホールを見渡し、ふと、そう思った。
この建物は、縦にも横にも、表現の仕様がないほど広い。
「迷子になるかもしれない」なんて言葉は、この状況下では、浮かんでもすぐに好奇心に掻き消されてしまう。


「少しだけなら……」


アリスは恐る恐る、初めの一歩を踏み出した。






果てしなく続く、真っ白な廊下。所々にある華麗な花々や、可憐な小動物を象った柱が印象的だ。夜になると道を温かく照らしてくれる、お洒落なランプも、清潔感漂う大きな扉も、全て等間隔に並んでいる。進んでも進んでも、進んだ気がしない。戻っても戻っても、勿論、戻った気がしない。代わり映えのない景色。だからといって、T字路や十字路で曲がってしまったら最期、二度と日の光を浴びる事はないだろう。中はとんでもない迷路になっているようだ。目印になりそうなものは一つもない。


「……ここは……どこ?」


加えて、これだけの建物なら、もっと人が居ても可笑しくないはずなのに、誰もいないのだ。どんなに歩いても気配すら感じられない。


「………」


「ほんの少し」のつもりが、「ほんの少し」では済まされなくなっていた。元居た場所に戻ろうと進んだはずなのに、今どこに居るのか全くわからない。この状況を一般的に「迷子」というのだのうか。


「どうしよう……」


アリスは力なくその場にしゃがみ込んでしまった。しっかりと座り込んでしまったその足は、なかなか動き出そうとしない。歩けば歩くほど、どんどん迷ってしまうのではないだろうか。頭の中にはそれしかなかった。


「誰か……」


肩を竦めた、その時だった。




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