primavera【プリマヴェーラ】

□はじめの一歩
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清んだ小鳥の歌声が静かに響く、真っ白なだだっ広い廊下に、先を急ぐ二つの足音が加わった。斑に空を飾る純白の雲が綺麗な、微風が心地好い天気だ。


「まだ、寝てるかな?」


彼の名はショパン。大空を舞う白雪のように清んだ白い素肌。素肌とは対象的に魔族を思わせる、ウェーブのかかった綺麗な漆黒の髪。穏やかな海を彷彿させる、ビー玉みたいなセルリアンブルーの瞳が印象的な彼は、思慮深く、人望も厚い、誰に対しても優しくて親切な紳士、だ。


「寝てんじゃない?」


彼の名はフィリア。その黒い素肌は上手く表現する事は難しいが、純白のショパンとはまた違った美しさがある。髪は、ショパンと同じ漆黒のストレート。瞳は同じく清んだ青色だ。
彼は言葉遣いは正直良くないが、面倒見はかなり良い。「頼れる兄貴」という言葉が、なんだかしっくりきてしまうような、そんな子だ。


「そうだよね」

「たぶんな」


仕事帰りとは思えないような軽い足取りで目的地を目指していた彼等の足が止まった。彼等の前にはメルヘンチックな可愛らしい扉がある。
どうやら彼等が目指していたのは、本邸からほんの数歩離れた所にある、小さな建物だったようだ。


「…気配が三つ…」


扉を開くとそこは、部屋の中心部にある大きなベッドを囲むように、壁一面に可愛らしいふわふわのぬいぐるみが飾られている、おもちゃ箱のような部屋だった。部屋を彩るように添えられた可憐な花々が、部屋の美しさを引き立ている。
部屋の中は、白のレースと上品な花で装飾された薄桃色のドレスを身に纏った、白兎のオルゴールが奏でる優しい音色でいっぱいだった。


「んー…」

「…やっぱり寝てる」


白を貴重としたベッドでは、瓜二つの青年が、無防備な天使の寝顔で熟睡している。


「はぁ…おいこら!人のベッドで寝るな!」

「あれぇ?かえってきたのぉ?」

「いがいとはやかったねぇ、おかえりぃ……」




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