primavera【プリマヴェーラ】
□プロローグ
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「どうして?どうして駄目なの?」
「許嫁?許嫁なんていらない。そんなモノ、いらないよ!」
「僕はあの人が欲しい…僕は、あの姫君が欲しいんだ!」
薄桃色の花弁舞う、三日月夜。
微風に靡かせた美しい黒髪。
振り返りざまに向けられた艶美な微笑み。
青年は彼女に魅惑された。
ほんの数年前の事。青年が抱いてしまった、叶う事のない恋心。
本物の愛に気付いてしまった彼は、もう戻れない。
青年の開花させてしまった欲望が、ゆっくりと確実に世界を歪ませる。
「愛しいあの人の傍らに…」
誰もが抱くその思いが今、世界を巻き込む悲劇に変わる。
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