primavera【プリマヴェーラ】
□醜い家鴨の男の子
3ページ/14ページ
「素直に認めりゃいいのに」
双子のぶっきらぼうな言い方が、いかにも嘘臭く、フィリアは自然と口にしていた。
「「違うって」」
「俺は、チェインもシャインも大好きだよ?」
嫉妬する要素がどこにあるのか、今一つ解っていないリリックは、「自分は、チェインとシャインとも、仲の好い兄弟みたいたモノだと思っていたけど、俺の独り善がりだったのかな?」と、不安に思い、ショックで濡れた瞳で二人を見上げた。
「「僕等もリリックのこと、大好き。僕等が言いたいのは……」」
「言いたいのは?」
「「……気にかけてもらってる、ラディが羨ましかっただけ」」
彼等はバツが悪そうにリリックから瞳を逸らした。元々、嫉妬心の強い二人。大の仲好し(二人曰く、大事なオモチャ)が他人を思うのが、気に食わなかったのだろう。
「やっぱりな」
四人の関係をよく理解している面々は、保護者のような気持ちで、彼等の様子を見守っていた。
「なんだよ?俺、いっつもお前等のこと、心配してんじゃん?」
双子の事を一番理解しているリリックだが、ラディ絡みの二人の感情は、未だに理解しかねている。
「ラディさん、早く帰って来てくれるといいですね」
この、どうにも表現の仕様のない微妙な空気を変えようと、アリスが滅多に開かない口を開いた。
「俺がどうかした?」
「ラディ!」
アリスの言葉が嬉しくて、「そうだよね」と、笑顔で返そうと思って開いた口は、愛しの彼の名を呼んだ。
「「お帰り。早かったね」」
双子は、先程までの膨れっ面とは対照的な、悪戯っ子の笑顔で彼を迎えた。何だかんだで、彼等もラディの帰りを楽しみに待っていたのだろう。
「予定より、早くすんだからね。あ、そういや、メアリーに会ったよ」
「何か、言ってましたか?」
「明後日、境にくるってさ」
「そうですか。久しぶりに会えますね」
「……さかい……めありー……?」
テンポよく進んでいく会話の中で疑問が生まれたアリスは、その言葉を呟いた。
.