私説Ω神話

□双子座誕生
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 観客席より一段と高いところ、教皇専用の観覧席で、サガは会場の二人の少女を見つめ、深い深いため息を漏らした。

 そのサガを冷ややかに見つめる、黄金聖衣纏った金髪の青年が一人。
「サガ・・・」
「なにもいうな、氷河。私は二人の育て方を間違ってしまったようだよ。」
 
 眼下、二人の候補は裁判の指示で、向き合って礼を取るところだった。
 サガは目を覆いた。
 「・・・してやられた。どうして女神というものは、揃いもそろってこうも無駄に行動力が高いのだ。それともこの場合はやっぱり「血」なのか!」
 「・・・サガ、現実逃避している場合じゃないんだぞ。万が一さやかが勝ってしまったらどうするんだ。」
 ーーあの子、乙女座うまれだろうに。 
 と現役水瓶座・氷河の教皇みる目は冷たい。その目は「あんたがしっかり監督してなかったから。」と責めている。
 
「そもそも、ホロスコープ選考はどうした!乙女座と双子座の区別もつかんかったか!どこの無能だっ!」
「あの子が偽りのホロスコープでも作ったんじゃないのか。星の女神であんたの星見の弟子だから造作もないだろう。」

「正義と良知のアストライアが嘘つくなんてそんな・・・!!」
「夢見るのはもうよしなよ。さやかだって生身の女の子だ。嘘の一つや二つはつくさ。」
「・・・そこまでしてなにがしたいのだ、あの子は!!そんなにパラドクスが気に入らないのか!あれか、噂の反抗期ってやつか!!」 
「落ち着いてくれよ!あまり喚くな、生徒たちに教皇の醜態さらしてもいいのか!」
ったくこのおっさん面倒くさい、とサガより14も年下の水瓶座はため息を一つ吐いた。
 普段あれだけ頭のいい男なのに、どうしたものか、娘が絡んだ途端クールじゃなくなる。しかもいい加減鈍い。

 ーーたぶん、あの子がそこまでやるのはあんたのためだろうな。
 氷河は心の中でつぶやいた。
 アストライアーーさやかの気持ちは氷河には痛いほどわかる。
 ・・・俺だって万が一我が師カミュの聖衣を継ぐ候補は俺じゃなくーーそう、たとえば当代牡牛座のハービンジャーや蟹座のシラーのようなやつだった場合、きっととりあえず手始めはカリツォで拘束した上オーロラエクスキューション一発だ。
 ーーまあ、万が一勝ってしまってもジェミニの聖衣受け継げない以上、どうする気だろうなあの子。
 未だに背後で頭抱えて唸っている親ばかは放っておくことにして、氷河は眼下の勝負を見守った。 





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