コルダ3創作
□わがまま(東かな)
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甘さを含んだ声で名前を呼び返し、相手の腰に腕を回す。
「な…ちょ…」
「逃げるな。」
かなでが数歩後ろに下がったため、彼女の背中が食器棚に当たる。
すかさず俺は両腕を棚につき、かなでを囲った。
「と、東金さん!」
「“千秋”だろ?」
「っ…〜〜」
後ろは食器棚、前には俺。逃げ場はない。(と言っても、腕の合間からすり抜け可能だが鈍い彼女は気づかない)
「ほら、何か言いたかったんじゃないのか?」
「ち、千秋は…っ」
「ん?」
「〜…キス魔!キス魔だ!」
「…お前…それ誰に吹き込まれた?」
「芹沢さんです。」
(あいつ…)
「よし、わかった。いいから、キスさせろ。」
「!話が全く噛み合ってません!」
「この体勢で何もしない方がおかしいぜ?」
「おかしくないです!」
「黙れって。」
真っ赤になって抗議するかなでの顎を捕らえ、有無を言わさず口付ける。
「好きだ。」
「〜〜…っ」
「“千秋、愛してる”って言えよ。」
「言いません!」
「ククッ」
「なんで笑うんですか!」
「お前が可愛いからだろう。」
「副部長、部長がまた小日向さんを襲っていました。」
「…芹沢クン、実は出歯亀なんやね。」
「違います。タイミングが合い過ぎるんです。見たいわけじゃありません。」
「そうなん?ほな仕方ないけど、いちいち俺に報告せんでええよ?」
「止めてきて下さい。」
「……なんでやの。」
「部長がこの夏、キス魔を通り越してしまいそうなので。」
「芹沢クンがいっておいで。」
「それは御免です。」
「ちょ、千秋」
「なんだ?」
「も、やめ…」
「やめねぇ。」
「なっ」
「キスぐらい好きにさせろ。」
「っ、やめ」
俺のわがままが済んだら
次はお前のわがままを聞いてやる。
だから、
もう少し
好きにさせろ。
END
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