遙か創作

□保健室の秘め事(リズ→望)
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「覚悟がいるんです、覚悟がっ!」

「春日、静かにしなければ口を塞ぐぞ。」

「え?」


先生は突然、ずいっと私の目の前へ顔を寄せてきた。


「口を塞ぐぞ、と言ったんだ。」

「し、静かにします!」


私が慌てて返すと、先生は「よろしい」と言って私の手の平に絆創膏を貼ってくれた。


(先生って、ナチュラルにびっくりすること言うんだよね…)


「春日」

「はい?」


名前を呼ばれて先生の顔を見たら、ふわりと何かが私のおでこに触れて。


「………ぇ」


(今のって…)


「せっ…先生っ!?」


リズ先生はニッコリ笑みを浮かべ、


「私はいつでもお前のことだけを考えているぞ。」


と、優しい瞳で言う。


「へっ……えっ!!?」


(なになになに?!なんでこんな展開にっ?)


パニックになってる私を抱き寄せて、先生は


「いつでもここへ来い。怪我などなくても‥な。」


と耳元で囁いた。


「リ、リズ先生〜〜!?」

















(…少々やり過ぎたか?)


窓の外に視線をやりながら、保険医は思った。


(春日は自覚が無さすぎる…)


愛しい人に傷を負わせるあの男。


(まぁ…自覚がないのは知盛も同じなのだろうが…)


愛しい人の口から出る、他の男の名。


(私を邪魔だと思っているんだろうな、あの目からして。)


どうやって教えるべきか。


(だが、私にも私の想いがある。)


この愛しさと、独占欲の強さを。


(どんな手でも使う…。)


心から大切なあの少女と

腹の立つ若造に。


(春日を手に入れる為ならば。)


自分がどれだけ欲しているか。あの子を。


(……私もよくこの歳で…)


我に返って恥ずかしく思ったりもするけれど。


「……愛しい。」


この気持ちは止められない。


止められるはずなど、ない。











心は動き出した。


静かに、


そして、


強く。











 END
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