遙か創作
□保健室の秘め事(リズ→望)
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「いや…アンタは殺すには勿体無い。」
「何言ってんのよ、無表情で!!」
その日からというもの、知盛くんはちらとでも私の姿を見ると竹刀を降り下ろしてくるようになった。
「ホントに…あの子、よくわかりません…。」
私が“何故そういうことをするのか”と問いかけたら、いつものダルそうな顔で
「俺と互角に戦えそうっつーか、結構出来そうだから」
と答えた。
「…春日の剣の腕を認めているということだろう。」
「でも、普通に過ごしてて竹刀降り下ろされたら対処のしようがないですよ。」
私だって、いつもいつも避けきれるわけではない。
いくら本物の刀ではないといえ、不意討ちでしかもこちらは竹刀を持っておらず、避けるか素手で竹刀を受けるしかない私は手や頬にかすり傷をつくるようになり、その度保健室に来るのだ。
「お前も今度から竹刀を持ち歩けばどうだ。」
「イヤですよ!!いくらなんでも、邪魔だしおかしいでしょ!!それに知盛くんが竹刀持ち歩いてるせいで怒られてるの、よく見かけますもん!」
知盛くんは常に竹刀を持っているため、先生達に『お前は一体何がしたいんだ』とよく怒られている。
「では、ずっとここにいろ。」
「え?」
「ここにいれば、奴はお前を襲ってはこないだろう。」
(…そういえば先生と知盛くんって…)
私は以前、知盛くんと先生が二人で何かしているのを見たことがあった。
「先生、知盛くんと仲いいんですか?」
「‥何?」
「なんかこの間、二人で廊下で何かしてたでしょう?」
「……何もしていない。」
「え?でも向かい合って…」
「向かい合って、突っ立っていただけだ。」
「へ?」
「何故か奴がこちらを睨んできたから、睨み返した。それだけだ。」
(それだけって…あの時、五分近く向かい合ってた気が…)
「だから、先生の所は安心ってことですか?」
「ん?」
「ここにいたら、襲われないって。」
「‥いや?ただ、ここにいれば私がお前を守れるだろう。」
「へ…」
先生はあっけらかんとそう言って、私の手の平の傷に消毒液をかけた。
「いったぁぁぁぁぁ!!!」
「痛くないと言っていた。」
「痛いんですっ!!不意討ちなんてヒドイです!」
「不意討ちでなければ、いつまで経っても出来ないだろう。」
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