遙か創作

□渦巻く(譲→望)
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「もー、電気も点けないで何してんの?いないかと思ったよ。」


そう言いながら、薄暗い教室から電気を見つけだした。

教室は、一気に光に包まれる。


…まるで、あなたのようだ。


あなたは、俺の心に光を照らす。


「ここ、誰の席?ま、いっか。座らせてもらいまーす。」


そして先輩は俺の前の席に腰を下ろした。


「…雨強くなってきたねぇ…。」

「…兄さんはどうしたんですか。」

「ん?先に帰ってもらったの。」

「どうして…」

「譲くんが心配だったから。」

「…え」



あなたのそういう所がズルいんだ。



「どうかした?」



優しい顔で、

優しい言葉で…


俺を捕らえて離してはくれない。



「‥別に、何もありませんよ。」

「……」



離れたいと思う。



離れたくないと思う。



「嘘だ。」

「!」


春日先輩は突然、俺の顔を両手で掴み、自分の方を向かせた。


「譲くん、最近そういうの多いよ?ていうか、何か考え事してるような時、絶対顔そらすでしょ。」

「そ‥そんなこと」

「あるんだよ。何か考えてることとか、悩んでることがあるなら、私でよければ聞くよ?」

「………」



あなたはわかって言ってるんだろうか。


俺のこの、強すぎる想いを。



「あんまり頼りにならないだろうけど、ね。」



あなたの一言が、どれだけ俺の行動を左右するのか。



「そんなことありませんよ。」


俺は、そう言いながら顔を掴んでいる先輩の手を顔から剥がした。


「…でもね?なんだか最近、本当に悩んでるみたいだから。」

「…悩んでるとしても…先輩は気にしなくていいですよ。」


そう言った俺は、ちゃんと笑えたかわからない。


「‥私じゃ、役に立てない?」

「そういう訳じゃないですよ。」

「じゃあ‥」

「すみません。気持ちは嬉しいんです。けど、そんなに心配されるような悩みじゃないんで。」

「…ん、わかった。無理には聞かない。でも!何かあるなら言ってね!私なんでもするから!」


(“なんでも”なんて簡単に言うものじゃない。)


「ありがとうございます。」

「いいえ!」



“なんでも”なんて言われたら、

本当に“なんでも”求めてしまう。


醜い独占欲に身を任せて、あなたの自由を奪いたくなる。


汚い欲に溺れて、あなたを掻き抱いてしまいたくなる。

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