コルダ3創作
□嘘つきと甘い人(悠人→小日向)
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急かされて、何がなんだかわからぬまま、目の前のものを口に含んだ。
「どう?おいしい?」
ほんのりと広がるアイス独特の冷たさ。
「…甘い…」
「チョコチップ入り練乳抹茶アイス!新作なんだよ!」
「甘過ぎます!チョコチップか練乳か、どっちかにして下さいよ!ていうか、抹茶の風味を殺してるじゃないですか!」
「えぇー…おいしいと思うのに…」
そう言って、先輩はさっき僕が口をつけたスプーンでアイスを頬張る。
「うん、おいしい♪」
(まったくこの人は…)
無邪気なのか、無神経なのか、真相はわからない。
「先輩、そんなのばかり食べていたら太りますよ?」
「うっ」
痛いところを突いたのか、先輩はしゅんとなって僕を見る。
「…女の子にそういうこと言ったらダメだよ、悠人くん。」
「すみません。」
「心込もってない…。」
たまらずクスクスと笑いを溢して、「ごめんなさい」と返す。
「許してあげません!罰として、このアイス半分食べること!」
「えっ」
「私を太らせたくなければ食べて下さい。」
「なんでそうなるんですか…」
「悠人くんがあんなこと言うから。悪いと思ってるなら、半分食べて下さい。」
「あのですね、先輩」
「あ、悠人くん嫌そうな顔してる!」
「嫌じゃないですけど」
「じゃあ、私半分食べるから、残り食べてね!これで“太る”とか言えないんだから!」
先輩が、半分まで食べたアイスのカップを僕に差し出す。
「はい!これでお互い様!」
(…意味が違う気が…)
そう思いつつ、苦笑いしてカップを受け取る。
「本当に食べますよ?」
「どうぞどうぞ!」
(あーあ…“太る”なんて冗談でも言うんじゃなかった。)
そして僕は、緊張で震える手を誤魔化しながら、残り半分を食べる。
(こんなにドキドキさせられるなんて、不本意だ。)
さっきより、甘さの増したアイスの味を噛みしめながら。
END
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