遙か創作
□可愛い人(遥か4)
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ワギモ
おれの大事な大事な…
─可愛い人
ver.遠夜─
森の精霊たちがおれに合わせて歌う。
精霊たちの歌には癒しの力はないけれど、おれは精霊たちの歌が好きだ。
優しくて清らかで。
何よりも、楽しんで歌っているのがわかる。
「遠夜?」
「…トオヤ、神子が呼んでいるぞ。」
「…神子…?」
兎が言う通り、森の入口から神子がこちらへと進んでいるのが見えた。
「ここにいたんだね。探したよ。」
「あ…すまない…」
「ううん、謝らなくていいの。私が好きで探してたんだから♪」
「…?」
「この森の精霊たちに挨拶をしていたの?」
「…あぁ。」
神子は、いつでもおれのことを理解してくれる。
おれの声が神子だけに聞こえるから…というだけじゃなく、神子はおれをちゃんと理解しようとしてくれるから。
「遠夜、なんだか楽しそうだった。」
「え…?」
「遠夜が楽しそうだと私まで嬉しい♪」
「…神子…」
ワギモ
おれのワギモ
「…兎が、」
「ん?」
「兎が、神子も歌えばもっと楽しくなる、と…」
「私も?…んー…音痴だけど…みんながいいなら(笑)」
「…いい。神子が歌えば、精霊たちも…喜ぶ。」
神子が歌い始める。
おれも歌う。
精霊も歌う。
神子は笑顔に。
精霊も笑顔に。
おれも笑顔に。
ワギモの歌声は
誰よりも優しく
誰よりも美しく
「遠夜、私遠夜の歌が何よりも好き。」
(……おれも)
大事な大事な
おれのワギモ
千尋の声が一番
好きだ。
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