遙か創作
□大事な大事な(知盛+猫&望美+八葉たち)
2ページ/2ページ
「九郎ちゃん…ですか…ふふっ。」
「笑うな、弁慶っ!」
初めて目にした人間たちの顔は
楽しそうな笑顔で溢れてた。
「みゃぁ」
「ん?」
「腹が…減っているようだ…。」
「敦盛さん、わかるんですかっ?すごい!」
「いや…私は…」
「何か食べさせられるようなものはあるかしら…」
「朔、これは?」
「望美…」
「神子姫サマ…さすがにトウキビは…」
「あはは、やっぱり?(苦笑)」
「…みゃ」
「ん?…どうしたの?擦り寄ってきて…」
初めて人間に頬を擦り寄せた感覚は、不思議と落ち着くものだった。
「神子、その仔猫の親が来たようだ。」
「え?あっ!ほんとだ!お母さんが迎えに来てくれたよ〜♪」
「みゃあみゃぁ」
「元気でねー!ご飯食べてねー!」
ぼくに手を振る人間を見て、『人間ってこんなにあったかいのか』って思った。
『…いつまで空仰いでるんだ…』
獣は動かない。
『……』
不思議と嫌な感じはしなくて、隣に腰を下ろしてみた。
『…青い空…』
あぁ、ぼくは間違ってたのかな。
『…………』
「この世は滑稽だ。」
『っ!』
「……お前には解せぬだろうがな。」
『ばかにするな。……滑稽でも、ぼくには綺麗な世界だった。』
あったかい人間が
あんなに冷たくなるなんて
思いもしなかった。
『戦なんて大嫌いだ。』
「………戦は逢世の場だ。ククッ」
『…獣にとっては…ね。』
「底の知れない女も現れるから、な。」
『………』
人間様、
あなた達は
いつまで戦を続けますか。
「さて…俺は行く。では、な。」
『二度と顔見せるな。』
人間様
獣様
どうかもう
大事なものを奪わないで。
ぼくに生きることの意味をください。
どうか どうか
少しでいいから
希望をください。
END