コルダ創作

□短編集。
5ページ/7ページ



【好きだよ(月日)】






『好きだよ』

そんな甘い言葉、言ってくれるはずないって分かってる。

それでも言ってほしいと思うのは、

私が強欲なせいだろうか。











「…何?」

「だから…」


私はすぐに行動に出た。


「好きって言ってほしいの。」

「………」


どうせ、“何を言ってるんだ”みたいに思われることは分かってた。


案の定、蓮くんは眉間にシワを寄せて、困惑した顔。


「どうしたんだ?」

「言ってくれないと、練習の邪魔するから。」


私はそう言って、近くにあった蓮くんの大事な大事なヴァイオリンを手に取った。


「香穂子…」


困らせてしまうのは心苦しいけど、たまには言ってほしい。


「………」

「………」

「……」

「…もういい。…ごめんね。」

「好きだよ」

「…!!!?」

「ヴァイオリンを、返してくれるか?」

「もう一回!」

「………」


蓮くんは、いかにもイヤそうな顔。


「不意打ちなんてズルイよ!!もう一回!」

「…無理だ。」

「……」

「……そんな目で見ないでくれ…」

「あ…」


蓮くんの顔が見る見るうちに赤くなる。


(…やっぱり恥ずかしかったんだ…)


「ありがとう、蓮くん!大好きだよ!」


「そんな君が…愛おしい。」


「え?」

「何もない。」





ただ、口に出せないだけで



君を好きだと思う気持ちは、いつでも、この胸にある。










 END

_

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ