遙か創作
□欠けたモノ(崇→ゆ)
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神様は残酷だ。
そんなことは、とうの昔に知っていた。
何度占っても変わらない、
ボクの行く末と、
あの人の進む道。
「お姉ちゃんは、どうせ…江戸も救いたい、未来も救いたい、神を救いたい、けど…自分はどうなってもいいって言うんだ。」
欲張りだけど、
底知れず、優しいことをボクは知っている。
「…………ボクは、どうなんだろう。」
事実を知ったら、お姉ちゃんはボクのことを救いたいと言ってくれるんだろう。
「“瞬兄も崇くんも助ける”とか、さらっと言うんだろうな。」
それこそ、バカげた夢でしかないんだ。
「…………何度占っても、行く末は同じなんだよ、お姉ちゃん。」
とっくの昔に諦めた、未来。
それでも、
抱いてしまう幻想は、変わることも、褪せることもなかった。
「だからさ………早く…消えちゃってよ」
あの人が苦悩せず、
ボクを苦しめず、
楽にボクが生きていける方法は、
あの人が自滅すること。
なのに。
「早く…………」
あの人が、こちらの世界に戻ってくる度、安堵した。
あぁ、まだ生きていたのか
そんな風に。
「……………龍神の神子なんて、いなくなればいい。」
(お姉ちゃんが、龍神の神子じゃなかったら)
「…ボクの世界に、」
(連れていくのに)
“神子”なんて、容赦なく消し去って、合わせ世に迎えるのに。
「あぁ、でも」
(お姉ちゃんには…似合わない)
「似合わないよね、こんな……こんな…寂れた世界」
口に出せば、単純なことだ。
きっと、ボクは
この世界を愛してなんかいない。
「………お姉ちゃん」
ボクが愛しているのは、
「どうして、ボクを一人にするの」
あの人が、ボクの隣にいる世界なんだ。
END
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