コルダ3創作
□わがまま(東かな)
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俺の好きにさせろ。
じゃなきゃ、
お前のわがままも聞いてやらないぜ?
― deeply in love
「かなで」
菩提樹寮の厨房でお菓子作りに励んでいるアイツの名前を呼ぶ。
惜しみ無く愛を注ぐように。
「なんでしょう?」
「敬語もうやめろ。」
「……でも、東金さんは先輩ですから。」
「あと“東金さん”も、やめろ。」
「え。」
「あからさまに困った顔するな。」
自分からキスしてくる勇気はあるくせに、タメ口はきけないなんて本当に奇妙な女だ。
「…東金先輩」
「いや、余計距離置かれてるだろそれ。」
(ちょっとイイけどな)
「…東金くん」
「クラスメイトか。」
「………」
「………」
「…東ちゃん」
「はっ?!なんでそこで『とうちゃん』なんだ!?」
「あだ名みたいな‥」
「んなあだ名で呼ばれたことねぇよ。」
「……き」
「金ちゃんも論外だぞ。」
「……」
(何考えてんだコイツ)
ボケボケした奴なのは承知してるが、あまりにも変化球なボケぶりには俺のツッコミの腕を試されてる気がする。
「下の名前で呼べばいい話だろ。なんで名字にこだわるんだ。」
「……」
「それこそ“千秋くん”とか」
「イヤです。」
「あ?」
困った顔をしていたかなでが、瞬時に返す。
「何がイヤなんだ?」
「………だって…“千秋くん”って、東金さんのファンが沢山呼んでますもん。」
「……………」
(なんだコイツ。なんだこの可愛い奴は。なんだ、なんなんだコイツ。こんな可愛い奴が他にいるか?いや、いねぇだろ。絶対かなでしかいねぇだろ。)
少し赤く染まった頬を、ぷくっと膨らませているかなで。
(たまらねぇ…可愛過ぎるだろ。)
自制心と戦い、なんとか言葉を発する。
「…なら、呼び捨てにしろ。」
「へ?」
「“千秋”たった三文字だ。簡単だろう?」
「いえ、それは」
「呼んでみろ。呼べない、なんて言わせねぇぜ。」
「…………ち、あき」
「……………」
真っ赤な顔を俯かせ、俺の名を呼ぶかなで。
(勘弁しろよ、ホント)
自制心なんてものとは、即座におさらばだ。
「かなで」
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