コルダ3創作
□抗えない気持ち(火→かな)
1ページ/1ページ
どうにも彼女は
無防備で困るのだ。
「火積くんっ」
目に涙を浮かべながら、名を呼び抱きついてくる彼女に対し、俺がどれだけ困っているか。
相手は知る由もないのだろう。
「…どうかしたか。」
あやすように背を撫でれば、唸りながら顔を隠す。
「トカゲがぁ〜」
「?」
「洗面所に…」
うるうるという音が聴こえてきそうなほど、その目は潤っている。
「田舎育ちだけど、トカゲはどうしても苦手なの…」
しゅんと俯き、俺の胸に額が当たる。
「…俺がどうにかしてやる。だから…泣くな。」
菩提樹寮へ来て、あっという間に時間が過ぎた。
小日向と過ごす日々は、あまりに鮮やかで、あまりにいとおしい。
「外に逃がしたぞ。」
「わぁ!ありがとう、火積くん!」
まるで兎のようにぴょんぴょんと跳び跳ねて、喜びを身体で表現する小日向。
どうにも愛しくて、柄にもなく微笑んでしまう。
「お礼にお昼は火積くんのリクエストメニューにするね!」
「いや…別に礼なんざ」
「いいの!私がお礼したいんだもん!」
「……」
「何が食べたいっ?」
「‥辛みのある握り飯…」
「あ、スパイシーおにぎりね!火積くん気に入ってくれてたもんね。承りました〜♪」
ニコニコと楽しそうに笑うから、
俺まで気持ちが跳ねる。
「いつも…」
「ん?」
「‥いや、何もない。」
「そう?」
“いつも、あんたは可愛いな”
なんて、言えるわけがねぇ。
「…なぁ、蓬生」
「ん?」
「あれはどういう関係だろうな。」
「小日向ちゃんと、至誠館の……なんでそないなこと、千秋が気にすんのや?」
「気にしてるわけじゃない。傍目から見るとあの組み合わせはどう見えたもんかと思ってな。」
「無粋やで。人の恋路を邪魔するもんは馬に蹴られて死んでまうよ?」
「地味子がどうなろうと俺には関係ない。ただ、朝からああも二人の空気を作られると邪魔したくはなるな。」
「なんや、千秋も若いんやねぇ…嫉妬やなんて。」
「は?…洒落にならんこと言うな。おもろないわ。」
「ふふ、そないムキにならんでも。」
「あのな」
この気持ちを
なんという?
「小日向」
「なぁに?」
「困った時は俺に言え。」
(他の男に駆け寄ることなんざ考えたら…笑えねぇ)
「ありがとう、火積くん♪」
どうにも
鼓動が高鳴るんだ。
あんたが
可愛過ぎて。
END
_