コルダ3創作

□抗えない気持ち(火→かな)
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どうにも彼女は

無防備で困るのだ。


















「火積くんっ」


目に涙を浮かべながら、名を呼び抱きついてくる彼女に対し、俺がどれだけ困っているか。


相手は知る由もないのだろう。


「…どうかしたか。」


あやすように背を撫でれば、唸りながら顔を隠す。


「トカゲがぁ〜」

「?」

「洗面所に…」


うるうるという音が聴こえてきそうなほど、その目は潤っている。


「田舎育ちだけど、トカゲはどうしても苦手なの…」


しゅんと俯き、俺の胸に額が当たる。


「…俺がどうにかしてやる。だから…泣くな。」




















菩提樹寮へ来て、あっという間に時間が過ぎた。

小日向と過ごす日々は、あまりに鮮やかで、あまりにいとおしい。


「外に逃がしたぞ。」

「わぁ!ありがとう、火積くん!」


まるで兎のようにぴょんぴょんと跳び跳ねて、喜びを身体で表現する小日向。


どうにも愛しくて、柄にもなく微笑んでしまう。


「お礼にお昼は火積くんのリクエストメニューにするね!」

「いや…別に礼なんざ」

「いいの!私がお礼したいんだもん!」

「……」

「何が食べたいっ?」

「‥辛みのある握り飯…」

「あ、スパイシーおにぎりね!火積くん気に入ってくれてたもんね。承りました〜♪」


ニコニコと楽しそうに笑うから、

俺まで気持ちが跳ねる。


「いつも…」

「ん?」

「‥いや、何もない。」

「そう?」


“いつも、あんたは可愛いな”

なんて、言えるわけがねぇ。





















「…なぁ、蓬生」

「ん?」

「あれはどういう関係だろうな。」

「小日向ちゃんと、至誠館の……なんでそないなこと、千秋が気にすんのや?」

「気にしてるわけじゃない。傍目から見るとあの組み合わせはどう見えたもんかと思ってな。」

「無粋やで。人の恋路を邪魔するもんは馬に蹴られて死んでまうよ?」

「地味子がどうなろうと俺には関係ない。ただ、朝からああも二人の空気を作られると邪魔したくはなるな。」

「なんや、千秋も若いんやねぇ…嫉妬やなんて。」

「は?…洒落にならんこと言うな。おもろないわ。」

「ふふ、そないムキにならんでも。」

「あのな」















この気持ちを

なんという?



「小日向」


「なぁに?」

「困った時は俺に言え。」


(他の男に駆け寄ることなんざ考えたら…笑えねぇ)


「ありがとう、火積くん♪」



どうにも

鼓動が高鳴るんだ。



あんたが

可愛過ぎて。











 END
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