遙か創作

□保健室の秘め事(リズ→望)
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学校の1階。

一番奥の部屋にその人はいる。







「リズ先生ー…」


私はその部屋の扉を開けるなり、その人の名を呼んだ。


「‥春日…またか。」


その人は机に向かっていた体をこちらに向けるなり、そう言った。


「す‥すみません。」


私はここの常連になっている。


「謝る必要はない。…ほら、こちらへ来い。」

「はーい。」


常連っていっても、ここは保健室だから、本当は常連になっちゃダメなんだろうけど。


「また派手にやらかしたな…。」

「でも、そんなに見た目ほど痛くないですよ?」

「ほぅ…?なら、我慢できるな。」


先生はすかさず消毒液を取り出して、私の怪我した手の平に吹き付けようとする。


「せっ先生、ストップ!!」


私は急いで制止をかけた。


「…なんだ。」

「な、なんだじゃないです!ちょっと待って下さいよ!!私がそれ嫌いなの知ってるじゃないですか!」

「知らん。」

「嘘つかないで下さい!毎回毎回嫌がってるのに!」

「‥毎回と言うほど幾度も保健室へ来るのは問題だと思わないのか。」

「うっ…だって、知盛くん、不意討ちでケンカ売ってくるから…」


そう、私の怪我の原因は後輩の知盛くんにある。


知盛くんは私が所属する剣道部の一年生で、とても腕がたつ。


「本人は喧嘩だと思っていないのだろう?」

「そこがまた厄介なんですよ…。」


そんな知盛くんが、私の姿を見るなり竹刀を降り下ろしてくるようになったのは約1ヶ月前。

























廊下を歩いていた私が、なんとなく変な予感を感じて右へと身体を引いた次の瞬間、

ヒュッ!とすさまじく風を斬る音がした。


(!!?? 竹刀っ!?)


「ちっ…」


私に竹刀を向けているのは剣道部の後輩。


「知盛くんっ?!」

「…………流石だな。」

「はっ?!」

「‥避けきるとは思っていなかった…。」

「いやいやいや!避ける避けないじゃなく、道場以外で竹刀振り回しちゃ危ないでしょっ!」

「…別に…振り回していない。アンタを狙ってただけで」

「なんで狙うの!っていうか、なんで竹刀持ち歩いてんの!」

「五月蝿い。…竹刀はいつも持っている。アンタを狙うのは、暇つぶしだ。」

「暇つぶしで人に竹刀を向けない!」

「‥なら、太刀…」

「余計危ないよ!!殺す気っ?!」

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