コルダ3創作
□欲しい言葉(七海+小日向)
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誰も、
教えてくれなかった…─
「あの、冥加部ちょ」
「なんだ七海」
「オレ、その」
「さっさと言え。部活に関する話なら聞いてやろう。」
「……オレのチェロは…冥加部長から見てどう思いますか!?」
「…話にならん。天音の室内楽部としてやっていくつもりなら、練習を積め。趣味でやってるなら室内楽部から去れ。」
「っ……」
冥加先輩が、自分にも他人にも厳しいことは承知していた。
それでも、
欲しい言葉があって。
聞けないことなんて、
最初からわかっていたのに。
「…オレは、馬鹿だなぁ」
川辺にたたずみそう呟いて、苦笑い。
(いっそ、チェロなんて諦められればいいのに。)
そうか、と思いついたのは、チェロを捨てるということ。
(…二度と弾けなくなれば、諦めもつくかな。)
チェロと向かい合い、“これが最後”と抱きしめて、
(今までありがとう…)
そう、想いを込めた。
「さよなら、オレのチェロ…っ」
「ストップ!」
「!?」
思わず川へ投げ入れようとした手を止める。
「何やってるんですか!」
「え、あ…」
突然、どこからか女の子が駆け寄ってきて、
「良かった…無事で。」
オレのチェロを大事そうに、優しく撫でた。
「……」
「何しようとしてたんですか!?」
「あ…その…捨てようと」
「はいっ?これが何かわかってますか?!楽器なんですよ!?」
「え、は、はい」
「捨てちゃダメです!しかも川になんてとんでもない!水に浸かったら二度と」
「いいんです。二度と弾けないようにしたいんです。」
「え…」
「いいんです。」
「………ダメです。」
「どうし」
「不法投棄にも程がありますよ!」
「………え」
「捨てるくらいなら、私にください。」
「あの」
すっと手を伸ばしてくるその人。
「楽器に罪はないじゃないですか。あなたが大事にしないなら、私が大事にします。」
「……」
(楽器に罪はない…─)
「大事じゃないわけじゃ」
「なら、どうしてですか。」
「へ?」
「どうして捨てようとしたんですか。」
刺すように真っ直ぐな目が、オレの心に痛みを与えた。
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