遙か創作

□大事な大事な(知盛+猫&望美+八葉たち)
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走って走って

何処までも走って

辿り着いた先には

獣がいた。





─ 存在 ─







「…猫…か。」

そいつはギラリと眼を光らせて、ぼくを馬鹿にするように笑った。

だから言ってやったんだ。

「みゃぁ」

大きな声で
『笑うな』って。

「…」


「知盛殿」


「なんだ…?」

「この周辺に源氏軍は潜んではいない様子。他を回ってはどうでしょう。」

「………先に行け。」

「承知しました。皆の者!先へ急ぐぞ!」


獣は一向にぼくから眼を離そうとしない。

ちょっと威嚇したからって本気になるなよ…と思いつつ、ぼくは一歩下がる。

別にこいつが恐いとかじゃない。

「おい」

『……なに』

「この辺りに、仲間は居らんぞ…?」

クッと笑うその顔にどうしようもなく腹が立って、ひとつ、猫の鉄拳を食らわしてやった。

『仲間がいないのなんて、とっくに知ってるよ。』

…だからぼくは、
走って走って走って
沢山走って
もう、千年分くらい走って
此処に来たんだ。

独りで生きるしかないと知ったから。

「…此処もいずれ…焼け野原、だ。」

『………』

こいつはなんなんだ。

獣のくせに。

何が言いたいんだ。

『…また、逃げろって?みんなみたいに死にたくなけりゃ、みっともなくたって逃げろって?』


戦はキライだ。

大嫌いだ。

ぼくの大事な大事な
母さまも、
ぼくの大事な大事な
父さまも、
大事な大事な友達も

みんなみんな
戦のせいで…


『お前もどうせ戦をするんだろ。お前が…お前たちがみんなを殺したんだろっ!』

「ふみゃっ!」

ポカっとぼくの頭に何かが当たった。

『……鞠?』

「…黙って、それと戯れておけ‥。」

『むかっ。なんなんだお前!ぼくを子ども扱いしてっ!鞠なんてな…鞠なんて…………仕方ないから付き合ってやるけど。』

「…クッ」

獣は木陰に座り込むと、空を仰ぐ。



















「みゃぁ‥みゃぁ」

「あっ!可愛い仔猫!」

「ほんとだ!九郎ー、猫がいるよー!」

「景時、何故俺に言う…」

「九郎は動物好きだから。ね、望美ちゃん♪」

「ですよねー、クロちゃんとも楽しそうに戯れてましたし♪」

「くろちゃん…?」

「ク・ロ・ガ・ネでクロちゃんです。」

「そう呼ぶと九郎とちょっと似てるね!」

「なるほど!九郎ちゃん!」

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