□なみだはこぼれないよ
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タッツ一人語り




もうすぐ冬だから。
仕方ないでしょ。
ああ、大丈夫だってば。
この脚が痛んだって、今はもうあの時みたいな底の無い不安とか怖さは感じないよ。
ちょっと寂しいような、なつかしいような気持ちになるだけ。
過ぎた時を引っ張り出すこの痛みの、胸の真ん中をきゅっとつかむような気持ちは、そう悪いものじゃない。

別にもう苦しくないよ。怖くもないったら。
そりゃあ不便には違いないけど、だってもう、困らない。
俺はもう走れなくても、フットボール出来る。

お前がそんな顔すんなよ。

今ここが軋んでも、俺はもう悲しくならないんだよ。
ただ少し、なつかしくなるだけ。
なつかしいということがたまに少し、
ほんの少し切ないだけ。






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