自由な短編集

□怒りで振るう力、優しさで振るう力
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「暑いな……」


唐突に歩がぼそっと呟いた。


体感温度三十度。たしかに暑い。温度計はハルナが落っことしてオシャカにした。


頼みの能力も連続使用すると後々動けなくなるほど疲れる。


つまり、この部屋の涼は冷凍庫か羽無し扇風機位だ。


「祐輔、どうすりゃいい……」


「知るかよ、んなこと……」


ちなみにハルナとセラはトモノリの家に避難し、絶賛クーラーで涼み中だ。


……ユーは知らねぇけど。


とりあえず日陰探すか。


「ちょっくら出掛けてくるわ」


「あぁ……帰りにアイス頼むわ」


ダメだ。歩は溶け出した。








行くあてもなくフラフラ歩いていたらトモノリのマンション前にいつの間にか俺はいた。


(夜も熱帯夜だな、こりゃあ……)


そんな事を、嫌がらせとも思える程遥か彼方で核融合をフル稼動してる太陽に心で呟く。


刹那、後ろで何かが落ちてきた音が響く。


ヒツジみたいなメガロだった。


「オイオイ、こんな暑い日に……」


間髪入れず、ヒツジば闘牛並みのスピードで突進してきた。


そしてドォン!!と大きい音が響いた。
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