ツガイドリ
□悪意はそっと隣に寄り添う
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『───おいおい、駄目だろうよ、お前。そーゆーのは。バレないように上手くやらねぇと』
『・・・キサラギ』
『誰に頼まれたんだか知らねぇが。俺から何かを奪おうなんて。百年早ぇぞ、三下』
『いつから。気付いてらっしゃったんです・・・?』
『あ? 最初から、テメェなんざ信用してねぇよ』
『酷い人だなあ・・・』
『信じるに値するものなんざ。極わずかだ。それ以外は全部。使い捨てでいい』
『・・・いいんですか? ここで私を消してしまったら・・・貴方にも大きな損失が出る。それどころか───』
『そうだな、テメェが死んだら。うちの利益は多少減るだろうな。けど・・・』
───────────パァンッ
『「多少」なら。問題ねぇ』
─Suspicious man─
『カンナギが、殺されたらしいぞ』
『へぇ。誰に?』
『蜉蝣だ』
『あはは。馬鹿だねぇ。自分の程度を弁えずにキサラギを出し抜こうとするからだよ。余程。頭の悪いヘマをやらかしたんだろうね、彼は』
『・・・』
『カンナギ・レイジ。なかなか面白い男だったのに。残念だなあ』
『奴を「面白い」なんて形容するのは、お前ぐらいだぞ、トウマ』
『そうかな? 俺は結構好きだったよ。彼、トラブルメーカーだから。信用するには値しないけど。見てる分には楽しいじゃない? 敵にも味方にもせず、第三者として。外側から眺めてるぐらいが、丁度いい奴だった』
『お前もタチが悪いな』
『・・・どう? それでも多少は。胸も痛んだりするのかい?「元同僚の死」って』
『───アイツは、俺より先に警察を辞めてる。別に思いれは無い』
『まあ。確かに。お前とはまるで違うタイプだったもんね。あの男は、どちからと言えば俺やキサラギに近い部類だろう? 救いようの無い「クズ」で。悪人向き』
『俺だって違わないぞ』
『だって。ヒサメは、警官してだろ? ちゃんと』
『・・・ちゃんとしてたら、お前に捕まってなかっただろうさ』
『いやいや。正義感や使命感ってものはね。思い付きで持ち合わせられるものじゃない。人間、何事にも向き不向きがあるんだよ。お前は悪人向きじゃない』
『・・・買い被りだ、そんなもの』
『そうかな? 俺は人を見る目だけは、ちゃんと持ってるつもりだよ。カンナギは。警官不向き。利己的で、いつも自分本位。正義を語る資格が無い。俺達に似てるけど、一つ大きな違いがあるとすれば、責任感すら無いことだね。そう言う軽率な奴は、夜の世界じゃ早死にするんだよ』
『・・・俺だって大差ないさ。刑事としての責任感が最後まであったなら。此処には、いなかったよ』
『違う。お前の場合はね、優し過ぎたんだよ、俺に対して』
『・・・』
『「優しい」と「馬鹿」は紙一重だ。迂闊な奴は悪人に付け込まれる。だから。とっ捕まっちゃったんだよ。お前は』
『────なるほど。つまり「馬鹿」だった訳だな・・・』
『そーゆーこと』
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