ツガイドリ

□羽汚しの明日は暗闇
1ページ/9ページ






─classicalcode:SCUM─




消えてしまえば。まあ。楽ではあったろう。
死ぬほど辛い事なんて
世の中にはゴミのように溢れ返ってる。
消えてしまえば。嘆く事も無かっただろう。
死ぬほどの痛みと悲しみを知る前に
その目を閉じれば。きっと、今頃は。




『さあ。どうしてくれようかな。この腐れ障害物』



『・・・こんなことをしてタダで済むと思っているのか、貴様。管理局がすぐに───』



『来やしねぇよ。お前のしてた事って。ただの横恋慕。外野はすっこんでろって話だから』



『貴様には判らんだろうな。秩序とは理を統一する事から始まるものだ。そして統一に邪魔な害悪因子は徹底的に葬り去るべきなのだ。ロキは、彼の万物干渉は全世界を揺るがす脅威だ。低俗な屍を束ねているだけの貴様には理解し難いかもしれんが。奴の存在自体が「神の失態」なんだよ』



『あ、そ。で?』



『・・・堕落の屍王。お前の望みは一つも敵わん。何をどう足掻こうと、お前が抱えた負の連鎖は断ち消える事などない。必ず悲劇に到達する。それは一つの根深い「呪い」だ』




『くっだらねぇなあ。負の連鎖とか輪廻とか。まあ、世界にはありふれてる訳で、それが云々って話も多いけど。別に重んじてもいねぇのさ、俺は。本当は、どーだっていいのよ、俺自身』



『・・・』



『ただ、まあ。ほら。何処に行こうが。誰が出て来ようがさ。ロキ君を苛めていいのは・・・俺だけだから。ね?』





愛するものから愛されることを望まない。
一方的な狂気と。憎悪にも似た愛を持て余し
極めて一方的に。それを振りかざす。
故に。その邪魔をすれば。
彼の逆鱗に触れる事は容易く。
・・・壊れているのは知っていた。
あらゆる世界において。
この男は、いつも愛憎に狂っている。




『さあ、ルッキー。お仕置きなんて優しいものじゃ治まりそうにもないけど。どうしようか? どんな悪夢が見てみたい?』



ニタアッと笑んだ。魔物特有のそれで。
赤く光った眼球が俺の中に
絶望的な見解を招く。
鋭い牙が。音を立て異質に変形する手足が。
死ぬよりも恐ろしい事になるだろうと
俺に予感させた。化けの皮を破って
醜悪な怪物が姿を表す。
ヴィルヘルム・タナトスは
完全にイカレているのだ。
異常な執着心だけが。彼を高ぶらせる。
テスタメントは。彼とよく似ている。
己の領域に踏み込んだものを
悉く破壊しようとする。
最初から。無事でいようとは思わなかった。
鍵を所持する彼から。
それを横取りしようとしたのだから。
失敗は即ち。地獄の始まりだ。
恐怖は見慣れたものだったが。
きっとそれ以上のものに
俺は。捕らわれてしまったのだろう。




『俺の領域に手を出すなら。副局長ぐらい呼んで来ないと。事足りないよ。ルッキー』



目を閉じる。それは諦めにも近い。
きっと俺は死なないだろう。
この男は死なせはしない。死なせやしないが
もっと屈辱的で悍ましい目に
合わされるだろう。
まあ、いいさ。それでも。
張り巡らせたトラップは
何処までも奴らを追い詰める。
俺がいようがいまいが。
そんなことはどうでもいい。
肉体なんて、そう意味を持たないのだから。
イザヤを・・・統一の『鍵』を。
手にするのは俺だ。
結局最後に勝つのは『俺』なのだから。




.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ